アフリカの内戦が欧米の戦争へ...ワグネルの影も──スーダンの紛争に終止符を打つには?
A HORNET’S NEST
停戦合意は繰り返し破られ、首都ハルツームでも爆撃が続く MOHAMED NURELDIN ABDALLAHーREUTERS
<内戦が地域の安定を脅かし利害を持つ各国の思惑が絡み合う。本誌「『次のウクライナ』を読む 世界の火薬庫」特集より>
東に紅海、南東でアフリカの角と接し、中央をサヘル地域(サハラ砂漠の南縁部)が東西に貫くスーダンで、4月中旬に国軍と準軍事組織の即応支援部隊(RSF)の戦闘が始まり、既に2000人以上の命が奪われた。スーダンでは2021年の軍事クーデター以後、国軍とRSFの権力闘争が続いている。首都ハルツームや西部ダルフールなどで激化している今回の戦闘も連鎖反応を引き起こし、地域の平和と安全保障に重大な影響を及ぼす可能性が高い。
スーダンの西隣のチャドはこの10年、スンニ派武装組織のボコ・ハラムやその分派のイスラム国西アフリカ州(ISWAP)などの壊滅的な活動に苦しめられてきた。その南に位置する中央アフリカ共和国も紛争が続いて政情不安が高まっている。西アフリカの沿岸諸国でも過激派勢力の攻撃が増えている。
スーダンでの衝突は、地域全体に小型武器や軽兵器を拡散させるだろう。北西部に隣接するリビアを含む新たな密輸回廊で、違法な武器取引が拡大するとみられる。問題をさらに複雑にするのが、紛争地域が広範囲にまたがるブルキナファソ、チャド、マリ、ニジェール、ナイジェリアなどの国境管理の甘さだ。
さらに、RSFを通じて外国人のテロリスト戦闘員が入り込む可能性もある。RSFの母体であるジャンジャウィードはダルフール地方とチャド東部を中心に活動するアラブ系民兵組織で、イエメンの内戦にも傭兵を派遣しているとみられる。
国軍とRSFの停戦合意はもろくも崩れた。本格的な地域戦争に発展する可能性もあり、中国、フランス、ロシアなど、積極的なプレゼンスを示して権益を維持している国々も一気に巻き込まれかねない。
懸念されるのは、地域で活動範囲を広げてきたロシアの民間軍事会社ワグネルだ。彼らが各地の反政府勢力に働きかければ、地域全体の緊張が悪化しかねない。一方で、情勢の悪化は、ワグネルのような組織に「専門的」な支援を求める地域の独裁者をつけ上がらせるかもしれない。
スーダンでの戦争はスーダンだけのものではない。22年2月にフランス軍はマリから撤退して主力部隊をニジェールに移した。フランスがサヘル地域で安全保障上の利益を追求する戦略的価値を考えれば、スーダンの崩壊を黙って見ていることはできない。
やはりこの地域に利害を持つアメリカ、イギリス、EUも同様で、国際貿易を保証するためにも地域の安定を確保する必要がある。ロシアと中国の政治的・経済的冒険主義を考えればなおさらだ。