最新記事
ロシア

<独占>武装反乱中、逃げたプーチンはどこに行ったのか

Exclusive: Putin 'Fled Moscow' During Prigozhin's Mutiny

2023年7月6日(木)17時45分
イザベル・バン・ブリューゲン

ロシア語の独立系テレビ局「カレント・タイム」は航空機フライト追跡アプリの「フライトレーダー24」のデータを基に、ロシアの大統領専用機「イリューシャンIl-96」の飛行ルートを調べ、同機が反乱の最中にモスクワを発ったと伝えた。同機はトベリ州で降下を始め、直後にトランスポンダーを切り、同州のホチロボ空軍基地に向かったとみられる。そこにはプーチンのバルダイの別荘に最も近い飛行場がある。

本誌も独自にIl-96のフライトデータを調べ、カレント・タイムの報道が事実であることを確認した。

プーチンだけではない。連邦政府や軍の高官の移動に使用されるロシア空軍の特別飛行隊のほかの航空機もモスクワから飛び立ち、うち1機はサンクトペテルブルクに着陸した模様だ。

「さまざまな部門を率いる上層部の面々も大挙してモスクワから脱出したようだ」と、ホドルコフスキーは話した。「これは反体制派にとってはまたとない好機だと、私は思った。だが......プリゴジンの乱はあっけなく幕切れを迎えてしまった」

ロシア人ジャーナリストのミハイル・ジガルも6月30日、ニューヨーク・タイムズ掲載の記事に、反乱が起きた日、プーチンはモスクワにいなかったと書いた。ただし、ジガルによれば、プーチンはその日、サンクトペテルブルクの伝統行事である「赤い帆」祭りを見学するため、親密な関係にある実業家のユーリ・コワルチュク所有のヨットに乗っていたという。

これに対して、調査メディアのアゲンツトボは写真などの証拠がなく、その日コワルチュクのヨットが出港したことを示す航跡データもないと反論している。もっともアゲンツトボも認めているように、オリガルヒが所有するロシアのヨットは位置情報を知られないためにトランスポンダーをオフにして航行することがままあるのだが......。

「独裁者はパニックになっている」

ホドルコフスキーの証言を裏付ける情報はほかにもある。イスラエル在住の反プーチン派のロシア人実業家で、ロシアのウクライナ侵攻後にロシア国籍を放棄すると宣言したレオニード・ネフズリンは6月24日、「プーチンはバルダイの私邸の掩蔽壕に隠れている」とツイートした。「奴の最も親密な友人や側近たちもバルダイに飛んだ。独裁者はパニックになっている。守りを固めるため追加の部隊がバルダイに向かったと、私の情報源が先ほど知らせてくれた」

ウクライナのメディア、ウクラインスカ・プラウダも6月24日、ウクライナの情報当局者の以下の談話を伝えた。

「われわれは既にプーチンがモスクワを去ったという情報を得ている。行先はバルダイとのことだ」

ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領府報道官は、国営通信社のRIAノーボスチに対し、クーデター未遂が起きたその日、プーチンは「クレムリン宮殿で執務に当たっていた」と語った。これについて本誌はロシア外務省にメールで確認中だ。

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4

ビジネス

ECB、12月にも利下げ余地 段階的な緩和必要=キ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中