最新記事
人種問題

フランス、少年射殺の抗議デモが暴徒化 秩序回復へ警官4.5万人配備、非常事態宣言の可能性も

2023年7月1日(土)11時08分
ロイター
フランス北部ルーベで火を付けられた車

マクロン仏大統領は、17歳の少年が警官に射殺された事件に対する抗議活動拡大を受け、前日に続いて危機管理の閣議を招集した。写真はフランス北部ルーベで火を付けられた車。30日撮影(2023年 ロイター/Pascal Rossignol)

フランスで17歳の少年が警官に射殺された事件に対する抗議活動が全国で激化し、建物や車両が放火され、店舗が略奪されるなどの被害が相次いでいる。

ダルマナン内相によると、29日夜の騒動で900人以上が逮捕され、その平均年齢は17歳だったという。

内相はさらに、フランス全土で午後9時からトラム(路面電車)とバスの運行を停止するよう地方自治体に要請。また30日夕から警察官4万5000人を配備すると述べた。非常事態宣言の可能性については「いずれの仮説も排除しない」とした。

29日夕には警察官約4万人が配備され、そのうち200人以上が負傷したという。

ボルヌ首相は記者団に対し、政府が秩序回復のために「あらゆる選択肢」を検討すると語った。

マクロン大統領は欧州連合(EU)首脳会議が開かれていたブリュッセルから急いで帰国し、前日に続き危機管理の緊急閣議を招集した。

マクロン大統領はこれまでのところ、非常事態宣言の発出は否定している。テレビ放映されたコメントでは、ソーシャルメディアプラットフォームに対し、暴動の「最も敏感な」映像を削除し、暴力をあおるユーザーの身元を当局に開示するよう求めると述べた。さらに、抗議活動が激化している地域では不特定の公共行事を中止するとした。

フランス第2の都市である南部マルセイユ当局は、30日に予定されていた公共デモを禁止し、全ての公共交通機関を現地時間午後7時に停止すると発表した。

30日、パリ郊外のナンテールでは、デモ隊が車に放火し、道路をバリケードで封鎖。パリ中心部のショッピングモールではナイキの店舗が暴徒に押し入られ、数人が逮捕された。ある情報筋がロイターに語ったところによると、スーパーマーケットのカジノは複数の店舗で略奪の被害にあっている。

一部の国には在仏の自国民に注意を喚起する動きがみられる。米大使館は29日のツイートで「大勢の人や警察が集まっている場所を避けるべき」と警告。イギリス当局は報道に注意を払い、抗議活動を避け、旅行の際は勧告を確認するよう促した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

自動車
DEFENDERの日本縦断旅がついに最終章! 本土最南端へ──歴史と絶景が織りなす5日間
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪3月住宅価格は過去最高、4年ぶり利下げ受け=コア

ビジネス

アーム設計のデータセンター用CPU、年末にシェア5

ビジネス

米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極

ワールド

ガザの砂地から救助隊15人の遺体回収、国連がイスラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中