ロシアの「裏庭」での支配力が低下...ナゴルノカラバフでの衝突が示す新たな局面
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いま和平プロセスの肝になっているのは、アゼルバイジャンへの再編入についての同国政府との交渉の進め方と、アゼルバイジャン国内では少数民族となるアルメニア系住民の権利の保障をめぐる問題だ。だがアゼルバイジャンは軍事的に優位な立場にあり、国際法でもナゴルノカラバフの領有権を認められていることから、交渉の主導権をほぼ握っている。アゼルバイジャンに領内のアルメニア系住民の権利を保障させるのは容易ではないだろう。
和平が実現すれば、アルメニアには経済的利益も期待できる。第1次紛争以降、アルメニアは地域で孤立を続け、国境の80%以上を閉鎖してきた。国境が開放されれば、貿易とエネルギー供給の機会が開け、ロシアに極度に依存する必要もなくなる。
カスピ海にあるアゼルバイジャン領ガス田からヨーロッパへのパイプラインは、いまアルメニアを迂回してジョージアを経由しているが、アルメニアにガス田関連の利権も生じ得る。さらにアゼルバイジャンの送電網に接続し、カスピ海で開発が予定されている風力発電エネルギーも活用できるようになるかもしれない。
両国の関係が正常化すれば、アゼルバイジャン政府へのアルメニア政府の影響力も増し、アルメニア系住の利益も擁護できるはずだ。
■日本への影響(文責:ニューズウィーク日本版編集部)
ロシアがウクライナ侵攻後に液化天然ガス(LNG)の供給を絞ったためにガス資源の世界的な争奪戦が起きるなか、アゼルバイジャンはEUにとって有望な代替調達先として期待が高まっている。現在計画が進むアゼルバイジャンからの大幅供給増が実現して大市場である欧州のガス不足が一服するかどうかは、G7で最もエネルギー自給率が低い日本の調達、そしてわれわれの暮らしにも影響を与える。
また中国からアゼルバイジャンなどを経由して欧州を結ぶ現代版シルクロードともいえる貨物ルート「中央回廊」はロシア経由でも海上輸送でもない第3の選択肢として物流業を含む日本企業の関心を集めている。
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