中国は「共通の敵」だが、アメリカに楯突くことも辞さない...インド「したたか」外交の狙いと効果とは?
Modi in America
モディ(左)とバイデンはさらに接近(昨年11月のG20バリ・サミット) ALEX BRANDONーPOOLーREUTERS
<今回で8回目となるモディ首相の訪米。インドは急速に強めるアメリカとの関係から、何を引き出そうとしているのか>
この20年間に世界で最も急速に深まった2国間関係は、米印関係だ。インドのモディ首相は6月21日、2014年の就任以来、8回目となる訪米を果たす(バイデン政権になってからは2回目)。
両国の接近から恩恵を得たいのはインドだけでなく、アメリカも同じだ。インドは既に人口で中国を抜いたともいわれる。経済規模はまだ中国に及ばないが、成長のペースは上回っている。アメリカにとっては武器売却を含め、大きな輸出市場だ。
アメリカには、ほかにも大きな国益が絡む。覇権主義を強める中国と、その中国が協調関係を深めるロシアを牽制する上で、アメリカは援護してくれる友好国が欲しい。インドは西側の民主国家にとって友好国だが、それ以上にインド太平洋地域の、そして世界秩序の未来をめぐる闘いでカギを握る「浮動国」でもある。アメリカとしては、ロシアと中国の陣営にインドがなびく事態は何としても避けたい。
アメリカは、生産拠点をパートナー国に移す「フレンド・ショアリング」によってサプライチェーンの強化を目指している。その立場からすればインドは「信頼に足る貿易相手国」だと、イエレン米財務長官は語った。
アメリカは「地政学上、安全保障上のリスクを持つ国」との貿易を避け、インドのような国との「経済統合の深化」を図りたいと、彼女は述べている。
インド太平洋地域の安定の維持にも、インドは重要だ。中印両軍が20年に国境係争地で衝突して以降、にらみ合いは4年目に入った。インドは中国の拡張政策を非難し、台湾侵攻の抑止力にもなっている。
西側には、インドとの戦略的関係の強化を図るアメリカの政策を疑問視する声も強い。懸念されるのは、インドが標榜してきた戦略的自立だ。モディ政権でインドは民主主義国との関係を強化する一方、ロシアとも以前からの緊密な関係を維持している。
だがインドの対米関係と対ロ関係は、正反対と言えそうだ。アメリカとは有人宇宙飛行から半導体のサプライチェーンまで、幅広い協力関係を構築している。しかしロシアとの関係は、軍事とエネルギー関連にほぼ限定されている。
それでもインドは、ウクライナに侵攻したロシアに厳しい姿勢を取る西側の輪には加わらない。それはインドがロシアを、中国に対抗する勢力と捉えているためでもある。
中国とロシアは必然的な同盟国ではないと、インドはみている。本来なら対抗する関係になるはずだが、アメリカのせいで手を結ばざるを得ないのだと。現状の中ロ連携は、インドにとって不都合でしかない。
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