最新記事
韓国

コロナ禍明けて明暗分かれた韓国企業 デリバリーのベミン、ホンダコリア、大韓航空

2023年6月18日(日)09時45分
佐々木和義
ホンダコリアのスクーターPCX

韓国のデリバリー業界で圧倒的な人気を誇るホンダコリアのスクーターPCX

<とかくスピードの早い韓国で成長が続けられるのはかくも難しいのか>

韓国企業各社の2022年の営業実績が明らかになった。コロナ・パンデミックで多くの企業が売上げを落とし、破綻した企業や韓国から撤退した外国企業も少なくないなか、反対にパンデミックによる特需の恩恵を享受した企業もある。

デリバリー代行業界のトップ企業「配達の民族(ベダリィミンジョク=略称ベミン)」は、2兆4049億ウォンの売上を記録した。コロナ禍前の2019年は5654億ウォンだった。

そしてこのベミンの好業績に日本製品不買運動がひと役買っている。19年8月以降、不買運動が拡大すると、日本料理店に出入りする姿を周りに見られたくない人たちがデリバリーを利用。そのため配達の民族は配達員を増強した。

翌2020年、新型コロナウイルスの感染が拡大して韓国政府が飲食店の営業時間や利用人数を制限するとデリバリー代行を導入する飲食店が急増したが、不買運動の最中に配達員を増強していた配達の民族は受注増に対応できたためライバルを引き離した。

急激に売上を伸長したベミンだが、このところ大きな課題に直面している。急激な需要増で配達員の獲得競争が激化した結果、配達員への報酬が上がっているのだ。コロナ対策のさまざまな規制が解除されデリバリー市場が縮小するとみられるいま、売上減と人件費高騰の板挟みにあっている。

デリバリー増加の恩恵は日本企業にも

ホンダコリアもコロナによるデリバリー利用増加の恩恵を享受した。デリバリー代行会社に登録して自前のバイクを用意する配達員が相次いでホンダを購入したのだ。

日本製品不買運動の影響を受けた2020年、同社の売上は前年比23%減の3632億1623万ウォンに落ち、営業利益は前年比90.1%まで激減した。撤退の噂が流れたが、コロナの感染拡散でデリバリー需要が増えると125ccのスクーターPCXとスーパーカブを買う人が急増。輸入が追いつかないスーパーカブは中古価格が新車価格を上回るほどだった。

PCXとスーパーカブの販売を強化したホンダコリアは2022年、3887億1079万ウォンを売り上げた。二輪車は乗用車より安いことから売上は2019年の4673億6360億ウォンを下回ったが、営業利益は17.1倍の338億ウォンで韓国進出以来最高益を記録した。

自前バイクを持ち込んだ配達員らはコロナが収束して日常生活に戻るとバイクは不要になる。登録後2年から3年経ったホンダの中古バイクは相応の値段で売れるが、DNAモータースなど韓国メーカーのバイクは値がつかない。
廃車まで乗り続ける人は値段が安いDNAを買い、中古で売る可能性が高い人たちはホンダを選んだ。コロナ禍中、韓国内で新車登録されたバイクの3台に1台がホンダだった。

バイクの販売で利益を得たホンダは、乗用車のオンライン販売システムを導入した。オフライン販売はディーラーによって販売条件が異なるが、オンライン販売はすべての購入者に同じサービスを提供できる。
ホンダコリアは2023年、新型アコードや新型CR-Vなど5車種の新車を発売し、大型バイクや電動バイク、さらにはビジネスジェットも投入する計画だ。

キャリア
企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を実現し続ける転職エージェントがしていること
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中