最新記事
ウクライナ戦争

ロシアが国境に築いた強固な「竜の歯」は、迂回すればいいだけだった

Russia Spent Billions on Fortifications. Rebels Simply Went Around Them

2023年6月15日(木)20時22分
ブレンダン・コール

要塞はどうした? 「自由ロシア軍」がドローンで撮影したベルゴロド攻撃の様子(6月5日) Freedom Of Russia Legion/REUTERS

<反プーチン主義のロシア人武装勢力は、まんまとロシア領内への越境攻撃を成功させた。そしてロシアが喧伝する「要塞化」がこけおどしに過ぎないことを実証した>

ウクライナ軍の反転攻勢に備えて、ロシアは強固な要塞化でウクライナ東部と南部の占領地域を死守する構えだが、ロシアの独立系メディアの分析によれば、ロシアの防衛線が頼りにならないことは既に実証されているという。

<写真>ロシア側がパニックに陥っている証拠? 境界線に設置された「竜の歯」

それを示したのは、ウクライナと国境を接するロシア西部ベルゴロド州で5月末に起きたロシアの反体制派武装集団による越境攻撃だ。

ベルゴロド州は、昨年2月のロシアのウクライナ侵攻開始以来、たびたび砲撃やドローン(無人機)攻撃にさらされてきた。

今年5月22日には、ウクライナのスーミ地域からロシアの反体制武装集団が国境を越えてベルゴロド州に侵攻。国境地帯の防衛網の脆弱さとロシア領内に戦火が広がるリスクをあぶり出した。

大金を投じたのに

この侵攻で戦車の進軍を防ぐために設置された、塹壕と「竜の歯」から成る防衛線は役に立たなかったと、ロシアのメディア「7x7」とベルゴロドのメディア「ペペル」が報じた。竜の歯とは、先の尖った巨大な歯のような四角錐のコンクリート・ブロックのことだ。

ベルゴロド州は100億ルーブル(約1億2428万5400ドル)を投じてこの防衛線を築いた。

同州のバチェスラフ・グラドコフ知事は今年3月、昨年4月から始まった建設作業がようやく終了し、この地域の防衛は万全になったと宣言した。

だが戦況を伝えるソーシャルメディアは、要塞の完成後も越境攻撃が続く状況を伝えている。

メッセージアプリ・テレグラムのチャンネル「スパイ・ドシエ」(ロシアの情報機関とつながりがある人物が運営)は、反プーチン派のロシア人戦闘員が結成した2つの組織「ロシア義勇軍」と「自由ロシア軍団」は防衛線を単に迂回して、高速道路に沿いに侵入した。その間、ロシア軍との交戦は皆無だった」と指摘した。

テレグラムのチャンネル「カントリー・ポリティクス」は、越境攻撃は防衛線よりも西側で起きたと伝えた。

試写会
米アカデミー賞候補作『教皇選挙』一般試写会 30組60名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中