最新記事
訃報

『ザ・ロード』『血と暴力の国』の米作家コーマック・マッカーシー、逝く

Tributes Pour in for Author Cormac McCarthy: 'A Loss Beyond Measure'

2023年6月14日(水)16時25分
アンドリュー・スタントン

生涯を通じて、暗く暴力的な世界と格闘し続けた作家、コーマック・マッカーシー(後ろは映画化された『ザ・ロード』のポスター PBS/YouTube

<「同時代のアメリカの最も偉大なアメリカの小説家かもしれないマッカーシーが亡くなった。彼の死は悲しい」──スティーブン・キング>

動画:「終末もの」ムービートップ10

米文学界を代表する作家コーマック・マッカーシーが6月13日に亡くなり、多くの追悼の辞が寄せられた。

作品の出版元であるアルフレッド・エー・クノッフ社のツイートによれば、マッカーシーはニューメキシコ州サンタフェの自宅で老衰により死亡したという。89歳だった。この知らせを受けてマッカーシーの作品を賞賛し、そこからインスピレーションを受けた作家やファンが、彼の著作から引用しつつ惜別の言葉を贈った。

マッカーシーの作品のなかでも、ベストセラーになった1992年の『すべての美しい馬』、2007年にピューリッツァー賞フィクション部門を受賞した『ザ・ロード』、また映画『ノーカントリー』の原作『血と暴力の国』(2005年)は有名だ。暗いテーマと黙示録的な風景を取り入れた作品が多く、現代アメリカの最も偉大な作家の一人と評されている。

出版社のペンギン・ランダムハウスは、本誌宛ての声明で、マッカーシーを 「世界で最も影響力のある有名な作家のひとり」と評した。「約60年にわたる作家としてのキャリアのなかで、彼は小説やドラマを含むいくつかのジャンルを手掛けた。その作品は現代文学として評価され、いくつかの権威ある文学賞を受賞している」

「もう彼から新たな創造は得られない」

この声明のなかで、ペンギン・ランダムハウスのニハル・マラビアCEOは、マッカーシーが「文学の流れを変えた」と書いている。

「60年もの間、彼は断固としてみずからの作品に身を捧げ、書かれた文章の無限の可能性と力を探求してきた。今後何世代にもわたってタイムリーであり、時代を超越し続ける素晴らしい小説のなかで、描き出されたキャラクター、神話的なテーマ、そしてすべてのページでさらけ出した親密な感情の真実を、世界中の何百万人もの読者が受け入れた」

作家のスティーブン・キングはこうツイートした。「コーマック・マッカーシーが89歳で亡くなった。彼は同時代の最も偉大なアメリカの小説家かもしれない。彼は年輪を重ね、素晴らしい作品を作り上げたが、それでも彼の死は悲しい」

「偉大な芸術家が亡くなると、その精神と心、そして広大な魂から新たな創造を得ることは二度とないことに、全世界がはたと気づく。それははかり知れない損失だが、その魂が私たちに残してくれたものは、時間を超えた贈り物だ。コーマック・マッカーシー、安らかに眠れ」と作家のジョセフ・ファザーノはツイートした。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ロのウクライナ停戦交渉、国連なども関与へ=ロシア

ワールド

中国副首相、ブラックストーン会長と会談 「米企業と

ビジネス

午後3時のドルは150円半ば、年度末の調整売買など

ワールド

アングル:逮捕されたイスタンブール市長、エルドアン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放すオーナーが過去最高ペースで増加中
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 5
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 6
    ロシア軍用工場、HIMARS爆撃で全焼...クラスター弾が…
  • 7
    止まらぬ牛肉高騰、全米で記録的水準に接近中...今後…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    トランプの脅しに屈した「香港大富豪」に中国が激怒.…
  • 10
    ドジャース「破産からの復活」、成功の秘訣は「財力…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中