元ドイツ空軍パイロットは中国で何をしているのか? 大スキャンダルの背景にある「中国軽視」
Still Naïve on China
アメリカが東アジアで中国と戦うのに必要な軍備は、ヨーロッパがロシアに対して十分な抑止力を保つのに必要な軍備に等しい。
そこには精密誘導弾、長距離防空システム、無人航空機、ISR(情報・監視・偵察)用航空機、電子戦機、早期警戒機、空対空給油用航空機、サイバー偵察技術、宇宙ベースのISRプラットフォームなどが含まれる。
こうした高性能な兵器を、アメリカは全世界で展開できるだけの数を持ち合わせているわけではない。ヨーロッパが中国に協力すれば、アメリカはより多くの軍備を中国にシフトせざるを得なくなる。
ウクライナ侵攻以降も欧州各国、特にドイツは高性能な軍備への投資が遅れている。ほとんどの軍隊はSEADやDEADなど高強度な戦闘に再び習熟するのに時間がかかるだろう。ロシア空軍はウクライナで高強度な戦闘に手を焼き、中国は間違いなくその習熟に苦労している。
ドイツのボリス・ピストリウス国防相は今年6月3日、中国の李尚福(リー・シャンフー)国防相と会談し、戦闘機パイロットの訓練にドイツ空軍の元軍人を雇うのをやめるよう要請した。
もちろん、口頭での要請だけでは足りない。ヨーロッパの各国政府は速やかに、国民と企業が人民解放軍を支援することを全面的に禁ずる法律を制定すべきだ。
アジアで超大国の米中が衝突すれば甚大な被害が予想される。アメリカが勝利したとしても戦力の立て直しに長い年月を要し、その間ヨーロッパを支える余裕はなくなる。
ヨーロッパはアメリカの対中国を含む軍事的抑止について真剣に考え、軍事的空白期間が生じるのを是が非でも阻止する必要がある。
今こそ甘い認識を捨てなければならない。アジアにおける中国の軍事侵略は、直接的にも間接的にもヨーロッパの安全保障に悲惨な結果をもたらすのだから。