最新記事
ブータン

首相が語る、「世界一幸せな国」ブータンが「カーボン・ネガティブ」で進む道

A BALANCING ACT

2023年6月16日(金)12時55分
ダニシュ・マンズール・バット(本誌アジア版編集ディレクター)

230620p50_BTN_01.jpg

首相は医師として今も公務の合間に執刀する COURTESY OF PRIME MINISTER'S OFFICE, BHUTAN

さまざまな難題はあるものの、ブータンは長年GDPよりもGNH(国民総幸福量)を優先している。本誌アジア版編集ディレクターのダニシュ・マンズール・バットがツェリンに話を聞いた。

◇ ◇ ◇


──ブータンと、インド、アメリカ、中国との関係をどう定義するか。

国というものは他国に依存せずにはいられない、隣国の存在を忘れるわけにはいかないと思う。ブータンは物理的にはインドと中国に挟まれている。わが国は両国から多くのメリットを得ており、両国は世界で最も人口が多く、経済も前例のない急成長を遂げている。挟まれていることは、実に光栄であり楽しみだ。

アメリカも世界の主要経済国であり、私たちはアメリカ国民と政府および指導者に非常に好意を持っている。従ってどの国にとってもプラスになるウィンウィン状態で、3カ国のうち1つを選ぶのは至難の業だ。

──ブータンは陸地に囲まれ、インドおよび中国と国境を接していながら、どうやってトラブルを回避できているのか。

それはケース・バイ・ケースだ。自分がどのくらい背が高いかは隣人や友人がどのくらい背が低いかによる。自分がどのくらい背が低いかは彼らがどのくらい背が高いかによる。

それと同じで、ブータンがどのくらい平和かは自国の力だけで築き上げられるものではない。近隣国が手を貸してくれたおかげだ。

近隣国の協力でトラブルを回避できていて、彼らの善意で今のブータンがある。陸に囲まれていることは不利にも有利にもなり得る。ありがたいことにブータンにとっては非常に有利で、しかもわが国は世界で最も急成長している2つの経済に挟まれている。

──インドとは友好関係にあるが、中国はブータンの領土の10%近くについて領有権を主張している。

インドとは歴史的にも地理的にも非常に良好な関係だ。インドのナレンドラ・モディ首相が就任後初の外遊先にブータンを選んだことは実に喜ばしく、その返礼として私も首相就任後真っ先にインドの首都ニューデリーを訪れた。こうした関係はいつまでも続くはずだ。

中国とも友好関係にある。国境画定交渉は順調に進んでおり、今年は既に政府の代表団を中国に派遣し、進捗状況は非常に良好だった。

次の段階は中国の技術チームがティンプーを訪れ、中国で合意したタイムラインを整理することだ(編集部注:交渉は5月下旬に開催された)。それから両国の国境を物理的に定める。国境画定をこれほど迅速に解決している国はほかにないだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中