NZ航空、搭乗前の旅客に体重測定を要請 「プライバシーの侵害」と物議
ニュージーランド航空のボーイング777-300ER型機(2020年5月、香港) Terry K-shutterstock
<積載重量管理のための調査として、乗客の平均体重を算出している。体重計に表示窓はなく、体重が周囲に知られることはないというが...>
ニュージーランド最大のオークランド国際空港で航空会社が、乗客に対し、搭乗前に体重計に乗るよう要請している。機の積載重量を管理するための調査であるというが、プライバシーの侵害だとして物議を醸しているようだ。
問題となっているのは、ニュージーランド航空が運航する国際便だ。同社のフライトを利用する乗客の平均体重を把握するため、調査活動の一環としてデータを収集している。米国営放送のNPRによると5月28日から測定が始まっており、7月上旬まで続く予定だ。
同空港へは、日本の成田からもニュージーランド航空の直行便が就航している。海外からの観光客の大半が出入国するニュージーランドの空の玄関口となっており、国外から訪れた旅客の帰国便への搭乗時にも影響しそうだ。
周囲に知られることはないけれど......
期間中に同社便の国際便を利用する乗客は、搭乗口に達する前の地点で体重計に乗るよう求められる。
もっとも、この体重計に表示窓はなく、体重が周囲に知られることはない。係員も数値を見ることはなく、データとして収集されるのみだという。データは個人と結びつけられず、平均体重の算出に用いられる。
また、計測は常に行われているわけではなく、今回の取り組みは5年に1度の調査の一環となっている。調査では1万人のデータを集めることを目標としているが、協力は義務ではない。会社側は、望まない旅客は申し出れば検査をスキップすることが可能だとしている。
「すべてのものを計量しています」
計測対象は乗客の体重だけではなく、機に搭載するあらゆるもののデータを集めている。ニュージーランド航空のロードコントロール(積載重量管理)改善スペシャリストは、AP通信に対し、「貨物から機内食、貨物室の荷物に至るまで、航空機に搭載されるすべてのものを計量しています」と説明している。
NPRによるとこの措置は、ニュージーランドの政府機関である民間航空局が定める規定に準拠したものだという。ただしAP通信は、当局が定める標準重量を採用する選択肢もあると述べており、乗客を実際に計量しないことも可能だった模様だ。これに加え、米CNBCは、「燃料効率の向上を目的とした試験的な取り組み」でもあるとしている。
公の場で体重計に乗るのは、やはり恥ずかしいとの意見が目立つ。科学ライターのブライアン・クレッグ氏は以前、NPRに対し、「航空産業の黎明期において、航空会社はこのようなこと(乗客の体重測定)を実際に行っていました」と解説している。そのうえで氏は、個々の乗客の計量は「あまりにも恥ずかしいことです」とも述べている。