最新記事
航空

NZ航空、搭乗前の旅客に体重測定を要請 「プライバシーの侵害」と物議

2023年6月13日(火)14時05分
青葉やまと
ニュージーランド航空のボーイング777-300ER型機

ニュージーランド航空のボーイング777-300ER型機(2020年5月、香港) Terry K-shutterstock

<積載重量管理のための調査として、乗客の平均体重を算出している。体重計に表示窓はなく、体重が周囲に知られることはないというが...>

ニュージーランド最大のオークランド国際空港で航空会社が、乗客に対し、搭乗前に体重計に乗るよう要請している。機の積載重量を管理するための調査であるというが、プライバシーの侵害だとして物議を醸しているようだ。

問題となっているのは、ニュージーランド航空が運航する国際便だ。同社のフライトを利用する乗客の平均体重を把握するため、調査活動の一環としてデータを収集している。米国営放送のNPRによると5月28日から測定が始まっており、7月上旬まで続く予定だ。

同空港へは、日本の成田からもニュージーランド航空の直行便が就航している。海外からの観光客の大半が出入国するニュージーランドの空の玄関口となっており、国外から訪れた旅客の帰国便への搭乗時にも影響しそうだ。

周囲に知られることはないけれど......

期間中に同社便の国際便を利用する乗客は、搭乗口に達する前の地点で体重計に乗るよう求められる。

もっとも、この体重計に表示窓はなく、体重が周囲に知られることはない。係員も数値を見ることはなく、データとして収集されるのみだという。データは個人と結びつけられず、平均体重の算出に用いられる。

また、計測は常に行われているわけではなく、今回の取り組みは5年に1度の調査の一環となっている。調査では1万人のデータを集めることを目標としているが、協力は義務ではない。会社側は、望まない旅客は申し出れば検査をスキップすることが可能だとしている。

「すべてのものを計量しています」

計測対象は乗客の体重だけではなく、機に搭載するあらゆるもののデータを集めている。ニュージーランド航空のロードコントロール(積載重量管理)改善スペシャリストは、AP通信に対し、「貨物から機内食、貨物室の荷物に至るまで、航空機に搭載されるすべてのものを計量しています」と説明している。

NPRによるとこの措置は、ニュージーランドの政府機関である民間航空局が定める規定に準拠したものだという。ただしAP通信は、当局が定める標準重量を採用する選択肢もあると述べており、乗客を実際に計量しないことも可能だった模様だ。これに加え、米CNBCは、「燃料効率の向上を目的とした試験的な取り組み」でもあるとしている。

公の場で体重計に乗るのは、やはり恥ずかしいとの意見が目立つ。科学ライターのブライアン・クレッグ氏は以前、NPRに対し、「航空産業の黎明期において、航空会社はこのようなこと(乗客の体重測定)を実際に行っていました」と解説している。そのうえで氏は、個々の乗客の計量は「あまりにも恥ずかしいことです」とも述べている。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発

ビジネス

気候変動ファンド、1―9月は240億ドルの純流出=

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ワールド

米商務長官指名のラトニック氏、中国との関係がやり玉
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中