ウクライナの二正面作戦でロシアは股裂き状態
Putin's Border Dilemma
イグナトフは、ロシア軍の反応が鈍いのは、彼らがウクライナ国内の占領地域の防衛を優先しているためかもしれないと分析。
「ロシア政府とロシア軍は、国境地帯で起きていることの影響を抑え込もうとしている」と、イグナトフは言う。「何も特別なことは起きていないふりをしたいのだ。彼らの言動からは、武装組織はともかく、ウクライナ軍本体がベルゴロドやクルスク地方に侵攻してくることはないだろうとたかをくくっている様子がうかがえる」
だがもしその通りだとしても、一連の攻撃はロシア政府に難しい問題を突きつける。
「両国の国境線、つまり前線は非常に長く、およそ1300キロメートルにも及ぶ」「ロシア軍は、この前線すべてをカバーすることはできない。ウクライナの東部と南部にほぼ全ての部隊を配備しているからだ。彼らはおそらく、ウクライナ軍の反転攻勢が東部のドンバスか南部のザポリージャから行われると予想しているのだろう」
ロシア軍指導部に対する批判が強まる
イグナトフは言う。国境の事態に対する「ロシア当局の反応はとても鈍く、国境付近の住民を避難させ始めるのも遅かった。本来なら、国境地帯の住民すべてを避難させるのが妥当だろう。ウクライナ側に協力するロシア人戦闘員たちがロシア領内に侵入できるなら、国境地帯の村落を攻撃するもできるからだ。住民にとって危険は大きい」
一連の越境攻撃に、以前からウクライナへの攻撃が手ぬるいと主張してきたロシアの超国家主義者やブロガーらは憤っている。ロシア国内で親ウクライナの工作員がドローンによる攻撃や破壊工作を行っている疑いも浮上している上、一連の越境攻撃が起きたことで、ロシア軍の信頼はさらに揺らいでいる。
米戦争研究所は報告書の中で、ベルゴロド州に無人機攻撃や砲撃を許していることが、「ロシア軍指導部に対する批判の中心になりつつある」と指摘した。
ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者で、ロシア正規軍の悩みの種でもあるエフゲニー・プリゴジンは、必要とあればワグネルの傭兵を国境地帯に介入させる用意がある」と述べた。