地方都市の「AIぼったくり駐車場」が全国的な「お上への反発」に発展した理由(中国)
借金を支払わなかった、裁判で負けても賠償金を支払わなかったという人物を登録できるもので、このリストに掲載されると飛行機や新幹線に乗れない、ナイトクラブやゴルフ場など娯楽施設を利用できない、マンションを買えない、子どもを優良私立学校に通わせてならない......といった制限を受けるというもの。
すぐさま牢屋に叩き込まれるようなきつい処罰ではないが、ゆるーく行動制限をかけることによって、借金を支払うように促すという制度である。
青秀区裁判所と駐車場運営企業との提携とは、つまり駐車場料金を支払わないやつはAIとビッグデータ、カメラで特定し、速攻でこのリストに掲載してやるという宣言だ。これはやりすぎだ、そもそもぼったくりだろと、現地市民とネットユーザーが怒り、市長が謝罪する事態にまでいたった。
南寧市という地方都市の問題が、中国全土のホットトピックとなったのは、「税金以外の名目で政府からお金が要求されるのが今後ますます増えそう」という不信感も背景にある。
というのも、昨年まで続いたコロナ対策で中国の地方財政はすっからかんになっており、あの手この手で収入確保を狙っているためだ。実際、このスマート駐車場ソリューションを開発している企業のサイトには、渋滞解消や道路管理の効率化と並び「財政収入の倍増器」というメリットがあると強調されている(下の写真)。
AI監視カメラの駐車場ソリューションから、裁判所との連携へ。これは拙著『幸福な監視国家・中国』(NHK出版、梶谷懐氏との共著)で描いた世界だ。
ただ、同書で紹介した山東省威海市栄成市は監視カメラによって路駐が一掃された街だったが、さらに「AI監視カメラがあるので合法的に路駐できるようになりました」と一周回っている点がなんとも面白い。
やりすぎ監視技術が生み出す中国B級ニュース、その進化はとどまるところを知らない。
[執筆]
高口康太(たかぐち・こうた)
ジャーナリスト、千葉大学客員准教授。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。著書に『幸福な監視国家・中国』(共著、NHK出版新書)、『プロトタイプシティ』(共著、KADOKAWA、2021年大平正芳記念賞特別賞受賞)、『中国「コロナ封じ」の虚実』、『中国S級B級論――発展途上と最先端が混在する国』(編著、さくら舎)、『現代中国経営者列伝』(星海社新書)など。
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