大きな成果がないと見られていたG7だが、「新・対中戦略」は本格化する
ワーキングディナーの席で顔をそろえた各国首脳(5月19日) MINISTRY OF FOREIGN AFFAIRS OF JAPANーHANDOUTーREUTERS
<アメリカ国内の足並みの乱れからG7は当初は期待されていなかった。しかし、G7諸国が相互の技術協力と中国との競争を重視するようになったことは既に大きな変化>
フェントメトリクス社のCEOアロン・ラファエルにとって、2018年に雇った3人の中国人は優れた勤労倫理を持つ「モデル従業員」だった。
ロサンゼルスに拠点を置く同社は、先端半導体チップの欠陥を製造工程で特定する技術を持つテクノロジー企業。ラファエルは3人に滞在ビザを取得させ、そのうちの1人は会社に投資までした。
だが2年前、彼らはその技術を盗み出し、中国に持ち帰ってライバル会社を設立。現在は同社の顧客や投資家に売り込んでいるという。
この一件は最近のアメリカの対中外交の背後にある恐怖を象徴する出来事だ。米当局は中国の先端技術へのアクセスを阻止することに注力するようになった。
最近ではアメリカの対中投資を規制する仕組みの導入を目指し、広島で開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)の直後に、計画の概要を示す大統領令が発効する見込みだ。
ラーム・エマニュエル駐日米大使は先週、「中国による経済的威嚇と報復を抑止・防御するためのツールを、G7加盟国は開発している」とツイートした。
経済的威圧に関してG7では、言葉や共同声明以上のもの、つまり実際の行動が期待される。中国による経済的威嚇と報復を抑止・防御するためのツールを、G7加盟国は開発している。貿易や投資は、政治的武器としてではなく経済的繁栄への方策として使われるべきである。 https://t.co/JLNWyVk9gB
— ラーム・エマニュエル駐日米国大使 (@USAmbJapan) May 16, 2023
だが、こうした措置の構築に何カ月もかかっていることは、バイデン政権の対中「デカップリング(切り離し)」政策の困難さを示すものだ。
昨年10月には半導体輸出規制強化に踏み切り、TikTok(ティックトック)など中国産アプリの禁止をちらつかせたが、最近はもっと穏健なアプローチに変化している。
イエレン財務長官とサリバン国家安全保障担当大統領補佐官は4月の講演で、いずれもアメリカの動きは国家安全保障に影響を与える技術に焦点を絞ったものだと強調。
「デカップリング」ではなく「デリスク(リスク除去)」を望んでいると述べた。