最新記事

G7

大きな成果がないと見られていたG7だが、「新・対中戦略」は本格化する

2023年5月22日(月)12時35分
リシ・アイエンガー

バイデン政権は「ハンマー」ではなく「メス」をツールに使いたいようだ。サリバンはかつて、「小さな庭に高いフェンス」というアプローチを提唱した。だが中国はこれまで、フェンスに穴を見つける能力の高さを証明してきた。

米中関係全体の環境もよくない。アメリカは中国との対話再開と外交的緊張の緩和を目指してきたが、悪名高い「スパイ気球」騒動で大きく軌道がずれてしまった。

それだけにバイデン政権は国際的な支持が欲しいところだろう。「同盟国の賛同が得られなければ、他国や他の企業は中国とアメリカ以外の地域に投資し、最終目標の達成は困難になる」と、戦略国際問題研究所のエミリー・ベンソンは指摘する。

先週末の時点でG7サミットで大きな成果が出るとみる専門家はあまりいなかった。最大の問題はアメリカ国内の足並みの乱れだ。

「G7サミットが(対中投資規制の)大きな契機になるとは思わない。バイデン政権は日本やイギリスのような他国の出方に探りを入れるかもしれないが、国内の議論への影響はほとんどないだろう」と、ハドソン研究所のライリー・ウォルターズ副所長は言う。

それでもベンソンによれば、G7諸国が相互の技術協力と中国との競争を重視するようになったことは既に大きな変化であり、この流れがすぐに逆転する可能性は低いという。

G7諸国や韓国などその他のパートナーは、「中国との戦略的競争に対する姿勢の根本的見直し」を進めていると、ベンソンは言う。「23年の春は後に大きな分岐点だったと言われるかもしれない」

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中