大きな成果がないと見られていたG7だが、「新・対中戦略」は本格化する
バイデン政権は「ハンマー」ではなく「メス」をツールに使いたいようだ。サリバンはかつて、「小さな庭に高いフェンス」というアプローチを提唱した。だが中国はこれまで、フェンスに穴を見つける能力の高さを証明してきた。
米中関係全体の環境もよくない。アメリカは中国との対話再開と外交的緊張の緩和を目指してきたが、悪名高い「スパイ気球」騒動で大きく軌道がずれてしまった。
それだけにバイデン政権は国際的な支持が欲しいところだろう。「同盟国の賛同が得られなければ、他国や他の企業は中国とアメリカ以外の地域に投資し、最終目標の達成は困難になる」と、戦略国際問題研究所のエミリー・ベンソンは指摘する。
先週末の時点でG7サミットで大きな成果が出るとみる専門家はあまりいなかった。最大の問題はアメリカ国内の足並みの乱れだ。
「G7サミットが(対中投資規制の)大きな契機になるとは思わない。バイデン政権は日本やイギリスのような他国の出方に探りを入れるかもしれないが、国内の議論への影響はほとんどないだろう」と、ハドソン研究所のライリー・ウォルターズ副所長は言う。
それでもベンソンによれば、G7諸国が相互の技術協力と中国との競争を重視するようになったことは既に大きな変化であり、この流れがすぐに逆転する可能性は低いという。
G7諸国や韓国などその他のパートナーは、「中国との戦略的競争に対する姿勢の根本的見直し」を進めていると、ベンソンは言う。「23年の春は後に大きな分岐点だったと言われるかもしれない」