「世界最大」となった中国海軍──インド洋で増す存在感...ジブチ「保障基地」が果たせる役割とは
CHINESE SUBS APPROACH
18年には、パキスタン海軍との合同海事演習の一環として、中国海軍の625C型海洋調査船「実践3」がインド洋北西部アラビア海にあるマクラン海溝を調査。同じ年、インド洋南西部に位置する中国大洋鉱産資源研究開発協会の契約海域に、調査船「向陽紅10」が派遣された。
19年以降は、ベンガル湾やアラビア海、インドとオーストラリア両国が潜水艦活動の重要地点と見なすインドネシア西方の海域で、中国最新鋭の「向陽紅03」などが深海調査を実施している。さらに、中国は水中ドローン部隊を展開して、インド洋の水生環境や深度、海水温度、塩分濃度も調査。こうした情報は、潜水艦ソナーの性能や潜水艦探知技術の向上に転用することが可能だ。
20年12月には、中国の無人潜水機利用が各国メディアの注目を集めた。インド洋に展開する水中グライダー「海翼」のうち1機が、インドネシアの南スラウェシ州にあるスラヤール島の沖合で、地元漁師に発見された事件がきっかけだった。
特定の軍事目的の下、中国は次世代自律型無人潜水機や海水温度・塩分測定フロートの開発にも力を注いでいる。なかでも、研究開発が進む水中音響グライダーは、インド洋での潜水艦探知・追跡活動を画期的に進化させる可能性がある。
インドは神経をとがらせるが
中国政府の調査船のプレゼンス拡大は、中国によるインド洋へのSSBN(弾道ミサイル搭載原子力潜水艦)やSSN(攻撃型原子力潜水艦)配備の促進につながるだろう。米海軍と日本の海上自衛隊の潜水艦や対潜水艦作戦用艦船が目を光らせる西太平洋と異なり、インド洋は中国が割と安心して活動できる海域だ。
だがインド洋に向かう中国の潜水艦にとって、探知されずに難所を通過できるかどうかは大きな課題として残る。この点で、ジブチ保障基地が果たせる役割は大きい。同基地への潜水艦配備は、インド洋地域での影響力拡大に向けて実行可能な次のステップになるだろう。
インドにしてみれば、ジブチの中国海軍基地とインド洋で強まる中国の潜水艦や調査船の存在感はさらなる懸念のタネだ。インドの排他的経済水域(EEZ)付近で中国船舶が活動する事態は、インドの勢力圏に対する挑戦であるだけでなく、安全保障が脅かされるリスクを高める。
インドは昨年、インド洋上の中国の調査船「遠望5号」「遠望6号」による追跡が危惧されたことから、ミサイル発射実験の延期に追い込まれた。インドのミサイル発射施設や海軍基地、ベンガル湾とアラビア海での船舶活動を、中国の深海漁船が偵察しているのではないかとの疑いもインド政府は抱いている。
インドは水中での活動能力を強化し、水中戦という概念を新たな目で捉え直す必要がある。それこそが、インド洋の水面下で膨らむ中国の脅威に対処する方法だ。
From thediplomat.com
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