トランス女性起用で白人マッチョ男性が不買運動、バドライトの売り上げが急減
Bud Light Backlash Is Hurting Other Anheuser-Busch Brands, Data Shows
レインボーカラーのバドライト ABCNews/YouTube
<固定客層に広がる不買運動を考えると、書き入れ時の夏まで影響が続く懸念も>
アメリカで一番人気を誇るライトビール「バドライト」の売り上げが急減している。トランスジェンダーのインフルエンサー、ディラン・マルベイニーとのコラボが保守派の猛反発を買ったからだ。
マルベイニーは男性から女性に変わる自身の性転換プロセスをTikTok(ティックトック)で公開し、1000万人以上のフォロワーを獲得している。今年3月にトランス動画公開1周年を迎えた彼女は4月1日、バドライトから自身の顔をプリントした缶を贈られたことをインスタグラムで公表。併せてNCAA大学男子バスケットボール大会期間中にバドライトが実施した無料サービス・キャンペーンを紹介した。
右派の政治家やミュージシャンのキッド・ロック、トランプ支持者らがソーシャルメディア上でこれを一斉に批判。バドライト不買運動の狼煙を上げた。
ビールの中心的な購買層は保守派の白人男性。彼らのボイコットの威力は凄まじく、米国内で販売されているバドワイザーなどバドファミリーの他の製品の売上も軒並み落ちていることが、最新の業界データで判明した。
バドライトやバドワイザーの親会社アンハイザー・ブッシュは、マルベイニーとのコラボが分断を生み出したことに遺憾の意を表明。コラボ企画を担当した幹部を停職処分にした。
LGBTQも批判
同社は伝統的な顧客層の反発を買ったばかりか、マルベイニーを十分擁護しなかったとして、一部のLGBTQとそのアライ(支援者)にまで批判されることになった。
同社のミシェル・ドゥーケリCEOは5月4日、バドライトの売上減は、アンハイザー・ブッシュの全世界での販売数量の1%程度だと発表したが、最新のデータを見ると、今後さらに損失が拡大する可能性がある。
飲料業界専門のコンサルティング会社バンプ・ウィリアムズ・コンサルティングが本誌に提供した、調査会社ニールセンIQの報告書によると、4月23〜29日の週にバドライトの売上高は前年同期比23.4%低下し、販売数量(ケース単位)は前週の21%減からさらに落ちて27.3%減となった。
保守派の不買運動が起きてから4月29日までの4週間には、バドライトの売上高は17.2%、販売数量は21.4%減少。同時期に競合ビールのクアーズ・ライトとミラー・ライトの売上高はそれぞれ17.3%と19.1%増加した。
「オフプレミス」、つまりレストランやバーではなく、消費者がスーパーなどで購入するバドライトの売上高はさらに減っており、4月16〜22日の週では前年同期比26%減となっている。