最新記事
世界のニュース50

100%死に至る... 狂犬病とともに「致死率最悪」でギネス認定された病気とは

2023年5月12日(金)10時10分
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)
クロイツフェルト・ヤコブ病の患者の脳

クロイツフェルト・ヤコブ病の患者の脳 BSIP-UIG/GETTY IMAGES

<2000年代初頭、イギリスを中心に広まって社会問題に>

「(非遺伝性疾患で)最も致死率が高い」としてギネス認定されている病気は? プリオン病と狂犬病だ。

プリオン病は伝達性海綿状脳症(TSE)とも呼ばれる非常にまれな中枢神経疾患。異常プリオンタンパクが原因で、数年から数十年の長い潜伏期間を経て症状が現れると急速に進行し、不随意運動、認知症、運動失調、人格変化などが起こり、100%死に至る。

ヒトのプリオン病である変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)は、牛海綿状脳症(BSE)に感染した牛を食べることでかかると考えられており、2000年代初頭にイギリスを中心に広まり社会問題になった。

狂犬病は致命的な感染症の中で最も一般的だ。WHO(世界保健機関)の推計では、世界で年間5万人以上が死亡している。予防接種や感染後のワクチン投与で効果的に発症を防げるが、症状を示した後の致死率は99.99%以上だ。

世界でも生還例はごくわずか。04年10月に発症した米ウィスコンシン州の15歳の少女がワクチン接種なしで回復したのが最初の例だ。

治療法は「ミルウォーキー・プロトコル」と呼ばれ、その後も数人の生存者を出している。患者を昏睡状態に誘導し抗ウイルス薬などを投与するが、まだ研究途上で、成功率は1割程度。麻痺などの後遺症が残るのが現状だ。

weboriginak20210521baeki-profile2.jpg[筆者]
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)
東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専攻卒業。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)、獣医師。朝日新聞記者、国際馬術連盟登録獣医師などを経て、現在、立命館大学教員。サイエンス・ライティング講座などを受け持つ。文部科学省COI構造化チーム若手・共創支援グループリーダー。第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。デビュー作『馬疫』(光文社)を2021年2月に上梓。

展覧会
奈良国立博物館 特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」   鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

世界的「異例」事態、ECBは慎重姿勢維持を=アイル

ビジネス

中国人民銀、中期貸出制度を修正 政策金利の役割さら

ワールド

米ロ、黒海穀物協定再開について協議へ=ロシア報道官

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、3月は7か月ぶり高水準 製造業
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放すオーナーが過去最高ペースで増加中
  • 2
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    ロシア軍用工場、HIMARS爆撃で全焼...クラスター弾が…
  • 5
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 6
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    ドジャース「破産からの復活」、成功の秘訣は「財力…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    インド株から中国株へ、「外国人投資家」の急速なシ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャース・ロバーツ監督が大絶賛、西麻布の焼肉店はどんな店?
  • 4
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 8
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中