最新記事
英王室

70年間待った男、チャールズ3世──新英国王の素顔とこれまでの歩み

THE CROWN AT LAST

2023年5月8日(月)12時30分
ジャック・ロイストン(英王室担当)

230516p18_TKS_03.jpg

2021年に英国でCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)期間中に首相と共にレセプションを主宰 STEFAN ROUSSEAUーPOOL/GETTY IMAGES

■ 再婚を果たす

ダイアナの死後、チャールズはウィリアムとヘンリーにカミラを紹介した。これで陰に隠れた関係ではなくなった。ヘンリーの回顧録によると、兄弟は彼女を受け入れたが、再婚しないよう父に頼んだという。

結局チャールズとカミラは05年に結婚するのだが、普通なら王室のカップルには必要でない手順を踏む必要があった。当時のカンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズは、教会での挙式を許さなかった。死別以外の理由で別れた者の再婚式に教会は使わせない。それが国教会の伝統だったからだ。

そこでチャールズとカミラは、ウィンザー城内のギルドホールで民事婚を挙げた。エリザベス女王は教会での結婚式にしか出席しないという個人的な信念から参加を拒んだ。それでも挙式後、城内のセントジョージ礼拝堂での祝福礼拝には参列し、祝辞を述べている。

しかし王室におけるカミラの地位については議論が続いた。伝統的にプリンス・オブ・ウェールズ(皇太子)の妻が持つプリンセス・オブ・ウェールズ(皇太子妃)という称号を引き継ぐことはできなかった。また当時の王室は、チャールズが国王になってもカミラに「王妃」の称号は使わせない方針だった。

■「王妃」の称号を確保

チャールズはカミラの称号問題を諦め切れなかった。そしてエリザベス女王も、ついに折れた。

昨年2月、健康問題を抱えながら在位70年の年を迎えた女王は王室の将来について声明を発した。「国民の皆さんから今なお頂く忠誠心と愛情に、いつまでも感謝と謙虚な思いを持ち続けている」

「やがて私の時が満ち、息子チャールズが国王となる日に、皆さんはチャールズと妻カミラのことを、私と同じように支えてくださるだろう。その日が来たら、カミラが忠実に務めを果たせるよう、王妃として知られることを私は心から願う」

■ 母なる女王の死

王位継承順位第1位の男として70年を過ごした後、チャールズは昨年9月8日に母の死をみとり、ようやく王座に就いた。

即位の翌日、国家元首として初の演説で彼は言った。「エリザベス女王の人生は素晴らしかった。運命を引き受けるという約束を守り通し、死して誰よりも深く悼まれた。生ある限り尽くすという母の約束を、いま私は新たにする」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米11月ISM非製造業総合指数52.1に低下、価格

ワールド

米ユナイテッドヘルスケアのCEO、マンハッタンで銃

ビジネス

米11月ADP民間雇用、14.6万人増 予想わずか

ワールド

仏大統領、内閣不信任可決なら速やかに新首相を任命へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    韓国ユン大統領、突然の戒厳令発表 国会が解除要求可決、6時間余で事態収束へ
  • 4
    混乱続く兵庫県知事選、結局SNSが「真実」を映したの…
  • 5
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 6
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 7
    肌を若く保つコツはありますか?...和田秀樹医師に聞…
  • 8
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない…
  • 9
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 10
    ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 4
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 5
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 6
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 10
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中