クレムリンのドローン攻撃、手動操縦でロシア国内発射の公算大きい=米専門家
ロシアの首都モスクワ中心部のクレムリンに対するドローン(無人機)攻撃について、米国のドローン専門家はドローンは国外から飛来したのではなく、ロシア国内で発射された公算が大きいとの見方を示している。写真は5月4日、ドローンによる攻撃の跡が残るクレムリンの屋根(2023年 ロイター)
ロシアの首都モスクワ中心部のクレムリンに対するドローン(無人機)攻撃について、米国のドローン専門家はドローンは国外から飛来したのではなく、ロシア国内で発射された公算が大きいとの見方を示している。
ロシア大統領府は3日、大統領宮殿内のプーチン大統領の居所を目指して無人機2機が飛来したが軍と特殊部隊がレーダー戦システムを用いて無効化したと表明。ロシアはウクライナがプーチン氏の殺害を図ったと非難したほか、4日になって攻撃の背後に米国の存在があると指摘した。
各国政府やオープンソースの情報アナリストは、目的地に飛来し爆発するように設計されたドローンの起源を突き止めようと、ドローンが撃墜される画像などを分析している。
非営利団体レジリエント・ナビゲーション・アンド・タイミング・ファウンデーションのダナ・ゴワード代表は、ロシアは2015年ごろから全地球測位システム(GPS)の偽信号を配信して測位信号をハッキングする「スプーフィング(なりすまし)」と呼ばれる手法でドローンを自動的に遠ざける対抗策を使い、クレムリンをドローン攻撃から守っていると指摘。こうした先進の防衛策が導入されていることを踏まえると、今回の攻撃に利用されたドローンはGPSを利用せずに手動で制御され、近くから発射された可能性があるとの見方を示した。
ドローン製造業者のBRINCの創業者兼最高経営責任者(CEO)、ブレーク・レスニック氏は「ドローンが検知され破壊されることなく、モスクワ上空を飛行し、クレムリンに到達できたのは驚きだ」と指摘。クレムリンにはレーダーと視覚追跡をベースにした近接防御システムがいくつもあり、弾丸や爆発物を使ってドローンやミサイルから守ることもできるにもかかわらず、ドローンがクレムリンに到達したのは「比較的小さなサイズと低い高度が役に立った可能性がある」としながらも、「ドローンがGPSを利用せず、地上管制局と通信していなければ、スプーフィングを回避できた可能性がある」と述べた。
長距離の飛行が可能な軍事用ドローンを保有している国は限定されるとの指摘もある。ドローン専門家で技術者擁護団体バーティカル・フライト・ソサエティーのダン・ゲッティンガー氏は、中国、インド、台湾、ウクライナなどは400キロメートルを超える距離を飛行できる大型軍用ドローンを保有しているとしながらも、今回の攻撃に使われたドローンがロシア国内から発射されていた場合、実行できるドローンの数はかなり多くなるとの見方を示した。