最新記事
世界のニュース50

イギリスで水泳プールが激減...その納得の理由

2023年5月1日(月)12時50分
コリン・ジョイス(本誌コラムニスト、在イギリス)
ロンドン・アクアティクス・センター

五輪のために建てられたアクアティクス・センターのプールはきらびやかだが HOLLIE ADAMS/GETTY IMAGES

<10年以降、400カ所近いプールが閉鎖された>

2012年の夏季五輪のために建てられたロンドン・アクアティクス・センターは、きらびやかな水泳施設だ。イギリスのスポーツ振興をさらに図り、国民の健康向上を目指す計画の象徴でもある。50メートルと25メートルのプールの利用者は、週に約1万4000人もいる。

【動画】ロンドン・アクアティクス・センターで水遊びを楽しむ女性

だがその陰には、プールをめぐる悲しい現実がある。イギリスでは10年以降、400カ所近いプールが閉鎖された。その多くは、最も貧しい地域のもの。肥満や不健康な住民の割合が一番高いエリアだ。

例えば北東部の町ハートルプールでは、12カ所あったプールのうち6カ所が閉鎖。うち3カ所は公立学校のものだ。地元自治体のプールも相次いで閉鎖されている。これらは退職者が集って運動をする地域社会の「ハブ」だった。

プールの受難は急に始まったものではない。財政難のせいで自治体は予算削減を迫られ、赤字を垂れ流すプールが標的になってきた。維持費を削ったために施設の老朽化が進行。そのため利用者が減り、プールの収入がさらに減るという悪循環に陥った。

とどめを刺したのが最近のガス価格高騰だ。政府は3月、財政難のプールに助成金を出すとようやく発表したが、失われた施設は戻ってこない。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、貿易協定第1弾を8日発表と表明 「尊敬

ビジネス

英財務相、予算目標未達で年内に一段の増税へ=シンク

ワールド

ガザ停戦巡り新提案の可能性、24時間内に判明も=ト

ワールド

英国、映画関税巡り米高官と協議中=クリエイティブ産
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 9
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 10
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中