戦争終結がいまだ見えないウクライナの復興事業 チェコとポーランド、58兆円規模の事業獲得レースの先頭走る
有利な条件
チェコとポーランドの企業にとって、両国政府がウクライナに軍事・政治的な支援を続けていることが、ウクライナで事業を行う上でメリットとなっている。いずれも旧ソ連の支配下で辛酸をなめた「仲間意識」も強い。
1991年に旧ソ連軍が撤退した後の地域の汚染除去作業を行った実績を持つチェコの環境サービス企業デコンタは今、ウクライナ国内で水質浄化プラント建設用地を探している。同社監査役会メンバーの1人が明らかにした。
最近、ウクライナ東部の最前線に近いドニプロペトロウシク州を訪れたこのメンバーは「われわれは11カ所の水質浄化ステーションを運営したい。戦争の終結に向けて、汚染除去プロジェクトの準備もしている」と話す。
「各村を回れば、どこでも需要がある」という。
ポーランドでは投資貿易庁が用意したプログラムの一環として、2300社を超える国内企業が、ウクライナの復興事業に参加しようとしている。ほとんどは建設や建設資材関連の企業だ。
キーウにある同庁事務所の責任者は、ポーランドは韓国、日本、英国など、ウクライナの事情により精通しているポーランド企業との提携を望んでいる国の代表者とも話し合いをしていると述べた。
この責任者は「われわれはウクライナの地方政府との関係を構築しつつある。なぜなら、草の根レベルから復興を開始したいからだ。今もこれからも課題になるのは、どうやって作業する従業員を安全に送り込むかになる」と説明する。
実際、ウクライナで活動している外国企業は日々の空襲に対応しなければならず、一部では軍事コンサルタントを雇う向きもある。
チェコのヘルスケア企業ブロックCRSの幹部ヤロウラフ・カムフラ氏は「われわれは従業員のスマートフォンに空襲警報アプリをインストールしている」と明かした。ブロックCRSは無菌手術病棟や移動病院ユニットを手がけており、カムフラ氏は需要を探るためウクライナを訪問していた。
一方、ポーランドはウクライナと530キロにわたって国境を接しており、物流ハブとして機能することができる。
同国の防火システムメーカー、メルコルの社長は「(ウクライナに)ポーランドの製品が真っ先に選ばれると見込んでいるし、われわれはウクライナと距離的に近いので輸送コストの面でも有利だ」と強調。ウクライナ西部のリビウにある工場の拡張を検討している。
課題はウクライナの透明性
ただ、ポーランドの建設企業ZUEのビエスラウ・ノバク最高経営責任者(CEO)は、中東欧企業がウクライナで復興ビジネスを円滑に展開できるかどうかは、ウクライナの行政組織がどの程度、透明性を示す能力があるのか次第になるとの見方を示した。
非政府組織(NGO)のトランスペアレンシー・インターナショナルが公表している腐敗認識度指数によると、ウクライナの透明度は世界で116位と、近隣の欧州連合(EU)加盟国よりもはるかに低い。
ノバク氏は「経済上の手続きにおける透明性や公正な入札制度、透明な歳出とこれらの資金の決済がなければ、誰もウクライナに投資しない。ウクライナにとってはこれが一番の課題だ」と指摘した。
(Michael Kahn記者、Robert Muller記者、Anna Koper記者)