中国の若者に流行する超弾丸節約トラベル「#特殊兵式旅行」 1日3万歩も歩き宿泊は夜行列車と安宿の女子も
ナティクシス・リサーチのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレロ氏は「中国人全体では以前ほどお金を使う態勢になっていない。政府が過剰な貯蓄を減らして消費を促そうと努力しても、うまくいくかどうかは疑わしい。人々がまた大金を支出し始めるには雇用の確保と賃金上昇が不可欠になる」と指摘した。
中国の政策担当者が経済成長においてより大きな役割を果たしてほしいと考えている個人消費は、確かにゼロコロナ政策解除後持ち直してきたが、回復ペースはずっと期待を下回り続けている。
なお苦戦が続く不動産市場や、若者世代の記録的高失業率、安定的な仕事に対するより幅広い層の不安、賃金や年金・医療制度に関する政府の「出し惜しみ」などが、慎重な消費行動が変わらない要因になっている、というのが専門家の見方だ。
16日に発表された4月の小売売上高は、前年同月比で18.4%増加した。とはいえ前年同月は上海でロックダウン(都市封鎖)が実施されていた期間で、増加幅は予想の21%に達しなかった。消費者信頼感も昨年の過去最低水準から改善したものの、過去20年のレンジを下回り続けている。
中国版インスタグラムと称されるSNSアプリ「小紅書」に投稿しているある旅行ブロガーはロイターに、安徽省の黄山を訪れた節約旅行では公衆トイレで寝泊まりしたと明かし、「その価値はあった。多少苦労はしたが、最低限のお金で美しい景色を堪能した。(ただし)将来的にはもう少し予算を追加して宿泊環境の改善を検討するかもしれない」と語った。
もちろん中国の消費加速期待が完全になくなったわけではないだろう。
北京に住むシン・チコンさん(23)は、歴史的なシルクロードの都市として知られる西安市にごくわずかのお金で行こうとしたところ、あまりにも大変だったので、結局当初予算よりも出費は多くなった。
「正しい靴を履いていなかったのかもしれない。でも私の足は1万歩を超えた時点で痛み始めた」と話した上で、冗談で自身の体験を「戦闘による負傷付き特殊兵式旅行」にたとえてみせた。
(Casey Hall記者)