1万ページの「読書キャンペーン」が始まる・北朝鮮
North Koreans Forced To Read 10,000 Pages Of Propaganda This Year To Foster Loyalty
平壌の地下鉄のエスカレーターで本を読む女性(2015年) Damir Sagolj-REUTERS
<金正恩を称賛する1万ページにも及ぶ本を読み、読書日記を義務付ける「読書キャンペーン」は、ドラマや映画、音楽など韓国カルチャーが北朝鮮に広まっていることへの「大反省会」>
国家と金正恩総書記に対する忠誠心を育むため、「読書キャンペーン」を北朝鮮が始めたことをRFA(ラジオ・フリー・アジア)が報じた。
1万ページにおよぶプロパガンダ資料を「読書キャンペーン」と称して強制的に読ませる背景には、韓国が制作した映画やテレビ番組、音楽がメモリースティックなどの機器を通じて、韓国から密輸されており、その「反動的」な韓国の大衆文化への危惧だという。
首都・平壌の北に位置する平安南道の工場労働者らは、金正恩の演説や党総会の記録などの資料を読むように命じられており、「毎日、読んだ内容を書き留め、年末に党組織に提出しなければならない」と、匿名の関係者が証言している。
「韓国映画を見るのと同じくらい[このプロパガンダ]本を読むのが面白かったら、みんな一晩中でも読むんじゃないですか?」と、工場労働者らは「我が国の偉大な指導者が最高である」というプロパガンダに不満を漏らしているという。
平安北道でも「朝鮮社会主義女性同盟」のメンバーらが、金正恩とその父・金正日時代の出版物や社会主義的メッセージが込められた小説を読むよう命じられたという。
少なくとも毎日30ページを読んで重要な考え方や思いを要約し、読書日記を書くことを課す「読書キャンペーン」は、政治的かつイデオロギー的にも「精神的な栄養を蓄える」ことが目的だという。
しかし、「反動的な思想を根絶する」ことを目的としているにもかかわらず、金一族を称賛する書物のみを1万ページも読む必要性について疑問の声も上がっている。
ロイター通信が国営朝鮮中央通信の話として報じたところによると、北朝鮮は昨年も「読書キャンペーン」を実施している。
「最悪の困難」に直面しながら北朝鮮の自立イデオロギーをさらに前進させるためには読書キャンペーンが必要だとし、思想的、道徳的強さこそが最大の武器であるとした。
ちなみにこの北朝鮮の読書運動の起源は、金正恩総書記の父・故金正日総書記が1960年代に金日成総合大学で始めた「1万ページ読書運動」に遡る。