最新記事
ウクライナ戦争

「高速で走る狙撃銃」の異名を取る仏戦闘車はウクライナの戦局を変えるか

What Are French AMX-10 Tanks? How They Compare to U.S. Bradleys

2023年4月20日(木)18時11分
エリー・クック

偵察戦闘車とも言われるフランスのAMX-10(手前)(3月19日、ベルリン近郊) Fabrizio Bensch-REUTERS

<反転攻勢へ向けてウクライナに到着するNATO兵器の1つ、戦闘車の実力は>

ウクライナはフランスから供与を受けた歩兵戦闘車AMX-10RCの実戦配備に着手した。それはさながら「高速で走る車輪付きの狙撃銃」だと4月18日、ウクライナのオレクシー・レズニコフ国防相は述べた。

フランスは今年1月初め、AMX-10RCの供与を約束。その直後にアメリカとドイツも相次いで自国の歩兵戦闘車の供与を発表した。

AMX-10RCは「軽戦車」と呼ばれることが多いが、キャタピラー(無限軌道)ではなく車輪がついた戦闘車で、口径105ミリのカノン砲1門、7.62ミリの機関銃2門を搭載している。アメリカは今のところ109台のブラッドリー歩兵戦闘車、ドイツは40台のマルダー歩兵戦闘車の供与を予定している。

【動画】仏偵察戦闘車AMX-10

アメリカ、イギリス、ドイツが1月末に供与を約束した主力戦車がそれぞれ個性を持つのと同様、歩兵戦闘車もそれぞれ異なる性能を備えている。

(主力戦車に関し、アメリカはエイブラムズ、ドイツはレオパルト1、2、イギリスはチャレンジャー2供与するが、フランスは現時点で自国の主力戦車ルクレールの供与を控えている)

軽戦車が続々とウクライナ入り

ではブラッドリーとAMX-10RCにはどんな特徴があるのか。

元米政権の軍事アナリストで、米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問であるマーク・キャンシアンは昨年12月、ブルームバーグに対し、ブラッドリーは「事実上軽戦車なので、供与により地上戦での(ウクライナ軍の)戦闘能力が大幅に高まる」と語っている。

製造元の英防衛大手BAEシステムズによると、ブラッドリーは「極めて優れた生存性、機動性、殺傷性」を特長とする。「高い火力と強力な装甲は、祖国防衛戦を続けるウクライナ軍を優位に導くだろう」と、米国防総省の報道官パット・ライダー准将は1月5日に述べた。

ウクライナ国防省は4月17日、ウクライナ到着後に戦闘地域に合わせた迷彩を施した2台のブラッドリーの画像を公開した。一方、AMX-10の第1陣の供与分は3月半ばにウクライナに到着したと、仏メディアが伝えている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中