最新記事
人道支援

アメリカに避難した27万人のウクライナ難民に迫る、タイムリミット

AN IMMIGRATION LIMBO

2023年4月20日(木)14時25分
キャサリン・ファン
ウクライナ人難民

メキシコのティファナでアメリカへの入国を目指すウクライナ人家族(2022年3月) MARIO TAMA/GETTY IMAGES

<戦火を逃れ命からがら到着したウクライナ難民は、主に3つの異なるステータスでアメリカに滞在している。将来の見通しがつかない不安と期限切れの不安...>

ラリーサ・アタマスはつい最近まで、今年4月にアメリカでの滞在期間が切れたら9歳の息子を連れてどこに行ったらいいのか分からなかった。分かっているのはただ1つ。家族で平穏に暮らしていたウクライナ北東部のハルキウ(ハリコフ)には帰れないことだけだ。

ロシアがウクライナに侵攻を開始し、過去100年間で最大級の難民の大量移動を引き起こしてから1年2カ月近くたつ。

戦火のやまない祖国を後にしたウクライナ難民は800万人超。うち27万人以上がアメリカに渡り、さらにそのうちざっと2万人はアタマス同様、連邦政府が昨年4月に緊急対策として打ち出した1年間の期限付きの「人道的臨時入国許可」制度で入国した。彼らの目の前には期限切れが迫っている。

「この先どうなるのか不安でたまらない」。3月に取材したときアタマスはそう訴えた。彼女の期限は4月16日だ。

アメリカが受け入れたウクライナ難民は主として3つの制度を利用して入国した。アタマスが利用した臨時許可、それに「一時的保護ステータス(TPS)」と「ユナイティング・フォア・ウクライナ(U4U)」だ。

この3つのうち、臨時許可で入国した人は最も不安定な立場に置かれ、認められた権利は最も少なく、許可された滞在期間も最も短い。

ウクライナ難民がTPSで入国できたのは昨年4月11日までだ。そしてバイデン政権がU4Uをスタートしたのは4月25日。その間にメキシコとの国境を越えてアメリカに入国したウクライナ人には1年の期限付きの臨時入国許可が与えられた。

U4Uの入国者は2年間滞在できる。TPSの入国者の滞在期間は1年半だが、祖国で紛争や政情不安が続いている場合は、送還される心配はない。臨時許可にはこうした保証はない。

臨時許可で入国した人もフードスタンプ(食料配給券)、メディケイド(低所得者医療保険制度)、一時現金支援を受けられ、就労許可を申請できるが、難民認定された人たちと違って、市民権の申請には道が開かれていない。

滞在期限が切れる人が出始めるのは4月11日。そのタイムリミットまで1カ月を切った3月13日に、米国土安全保障省(DHS)はようやくこの問題に対処する姿勢を見せた。

試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中