最新記事
人道支援

アメリカに避難した27万人のウクライナ難民に迫る、タイムリミット

AN IMMIGRATION LIMBO

2023年4月20日(木)14時25分
キャサリン・ファン

臨時許可の入国者にも「ケース・バイ・ケースで」、U4Uにより送還猶予を与えられた「一部のウクライナ人とその家族」と同等の扱いをする、というのである。

だが詳細は発表されておらず、臨時許可を受けた人たちが全員引き続き滞在できるかどうかは不透明だ。

やっと生活が落ち着いたのに

国外避難から「1年たって子供もようやく学校に慣れ、友達もできて、空腹に耐えたり駅で寝泊まりしたりした恐ろしい記憶が少しずつ薄れ始めていたのに」と、アタマスはため息をついた。「また先の見えない不安に子供をさらすなんて」

戦争の終わりは見えないのに、期限が延長されなければどうなるのか。アタマスはアメリカにたどり着く前に、息子と家族の友人の高齢者を連れ安全な避難先を求めて1カ月半ドイツ各地を転々としたという。それは想像を絶するほど過酷な旅だった。

またぞろ不安な旅をするのを恐れているのはアタマスだけではない。「当初は状況が好転したらすぐに帰るつもりでウクライナの国境近くに滞在しようとした」と、マリア(姓を伏せるという条件で取材に応じた)は話す。けれども祖国に帰る望みは日に日に遠のいていった。

マリアは娘と共にまずポーランドを目指したが国境の長い列を見て断念し、ハンガリーに入った。首都ブダペストに2週間滞在したが、この国には長居しないほうがいいと助言する人がいた。昨年4月の総選挙でロシア寄りで鳴らすオルバン・ビクトル首相の再任が決まったからだ。

マリアと娘が次に入国したのは、ウクライナ難民の大量流入に圧倒されていた小国ベルギーだ。

「ベルギーはとても温かく迎え入れてくれた」と、マリアは言う。「でも、もう大勢のウクライナ人が逃げてきていた」。そのため、娘を通わせる学校を見つけるのにも難儀した。

マリアは長く腰を落ち着けて過ごせる場所を求めて、家族の1人が住む米コネティカット州を目指すことにした。しかし、この時点では合法的にアメリカに入国する道がなかった。ビザ発給の面接を受けられるのは、早くても今年9月だった。

そこで、マリアと娘はスペインに向かい、さらにメキシコに渡ると、ティフアナで国境を越えてアメリカに入った。そのあとニュージャージー州に飛び、そこからコネティカット州グリニッジにたどり着いた。

「アメリカにやって来てからの10カ月間は、楽な日々ではなかった」と、マリアは振り返る。「それでも、ハンガリーでの2週間は、それとは比較できないくらいつらかった」。マリアと娘の滞在期限は4月23日だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 5
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 9
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中