最新記事
ロシア情勢

ロシア軍関連施設で相次ぐ不審火。反プーチン勢力「黒い橋」の犯行声明も

Fire Breaks Out at Russian Tank Training Ground After Explosions: Reports

2023年4月17日(月)15時23分
アンドリュー・スタントン

クリミアのロシア空軍基地で起きた大爆発(2022年8月9日) Reuters

<ロシアでは軍の関連施設などで火災が相次いでいる。最新のターゲットは戦車の訓練場。だが当局は、爆発と火災があったことさえ認めていない>

ロシア西部カザンで4月15日、戦車の訓練場で火災が発生したと地元メディアが伝えた。火災の前には爆発音が聞こえたという。

カザンはモスクワの東約700キロ、100万人以上が暮らす都市だ。ウクライナのネットメディア、キーウ・インディペンデントによれば、爆発音が聞かれたのは市の南部、戦車の訓練に使われている場所の近くだったという。

【動画】カザン当局が「知らない」と否定している大爆発

ロシアが「特別軍事作戦」ことウクライナ侵攻を開始したのは昨年2月。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は当初、短期間での勝利を見込んでいたが、今もロシア軍は期待通りの戦果を挙げるには至っていない。春を迎え、ウクライナはロシア軍に支配されている地域を奪還すべく、反転攻勢の準備を行っているとみられている。

15日午後の時点で、カザンの火災の詳細はほとんど分からないままだった。ロシア当局は考えられる火災の原因について黙して語らないばかりか、火災によるけが人や死者の有無についても明らかにしていない。

そもそもロシア当局は、報道されたような火事の報告は受けていないとの立場だと、地元メディアのインカザンは伝えている。動画も撮影されているのにだ。

インカザンによれば、周辺住民はメッセージアプリのテレグラムに「大きな爆発音」が聞こえたと投稿、爆発の発生を伝えたという。自宅アパートが揺れたとの投稿もあった。

反政府勢力が「犯行声明」を出した例も

カザン市内で煙が高く立ち上る動画も15日朝にソーシャルメディアに投稿されている。

「カザンの住民は戦車の訓練場近くで強力な爆発が起きたと伝えている。地元当局はいつも通り、全てを否定している」と、ベラルーシの報道メディア、ネクスタはツイートした。

地元当局は10月、プーチンが9月に出した部分動員令を受けてウクライナでの戦闘に動員された一部の住民がカザンに送られたと明らかにしている。ちなみに部分動員令が出されたのはウクライナの反攻のさなか。この反攻でウクライナは、北東部ハルキウ州の大半を奪還した。

今回の火災の原因は分かっていないが、ウクライナ侵攻が始まって以降、ロシアでは軍などの関連施設で火災が相次いでいる。

3月には、大陸間弾道弾(ICBM)トーポリMの発射装置などロシア軍向けの兵器を製造している工場で出火。地元当局によれば、建物から7人が救助されたという。

同じく3月には、ウクライナとの国境に近いロシア南部の都市ロストフナドヌーで、連邦保安局(FSB)が使用している建物で火災が発生。「黒い橋」と名乗る反プーチン派勢力が犯行声明を出した。この火災では少なくとも4人が死亡、5人がけがをした。

また昨年12月には、モスクワのクレムリン近くの軍の関連施設でも火災が起きている。

本誌はロシア外務省に電子メールでコメントを求めたが回答は得られていない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中