元ポルノ女優への「口止め料」については完全に開き直るトランプ...「選挙法違反」にできるのか?
Not a Slam Dunk Case
根拠となる法律は何か
公開されたブラッグの陳述書は、トランプの不正行為が選挙関連の違反であることを強調しようとしている。例えば、トランプがコーエンに対して、ダニエルズへの支払いを「できる限り」遅らせるよう指示したと主張する。
もし選挙に負ければ「不倫が公になっても構わない」し、「口止め料の支払い自体を回避できる可能性がある」ためだ。
陳述書には18年に、ナショナル・エンクワイアラーの当時の親会社アメリカン・メディアが、ダニエルズが16年の米大統領選投票日前にトランプにとって「不利な主張を公表」して「選挙に影響を及ぼすことがないように」するための計画への関与を米司法省に対して認めたという事実も記載されている。
しかし、この計画は具体的にどの選挙法に抵触したのか。それこそが軽犯罪か重罪かを分ける決め手だが、起訴状にも陳述書にも記されていない。
この点についてブラッグは、記者会見でごく簡単に説明した。彼は重罪となる根拠を2つ挙げた。
1つは「選挙において違法な手段で候補者を有利または不利にする」ための共謀を禁じるニューヨーク州法への違反。もう1つは、選挙活動中の寄付に関する連邦法の上限規定への違反だ。
しかし1つの連邦法違反が、業務記録の改ざんを軽犯罪から重罪に変える根拠となるかどうかは明白ではない。だとすれば残るのは、ニューヨーク州法違反だ。
ブラッグは、ナショナル・エンクワイアラーの元親会社がトランプの口止め料計画を隠蔽するために帳簿に虚偽の記載を行ったと指摘。これが選挙でトランプを有利にしようとする行為に当たるという。
ただし、これらの罪の立証は難しい。ブラッグが苦戦を強いられるのは間違いない。一連の罪状は、16年の米大統領選の流れを不正に変えようとする複雑な計画があったことを物語る。今回の起訴の正当性について、陪審員団と世論の両方を納得させる強力な材料にもなり得るだろう。
しかしブラッグは、性質の異なる違反行為をつなぎ合わせて1つの犯罪にまとめ、それが不正な支払いをめぐる34件の罪状を構成するという論理を展開しようとしている。何とも複雑で、難解とも言える主張だ。この裁判は、民主党側が望んでいた「渾身の一撃」には程遠い。