ファシズム国家の冷酷さを直視せよ
Get Out of Russia
モスクワの裁判所から姿を見せたゲルシュコビッチ(3月30日) EVGENIA NOVOZHENINAーREUTERS
<米国人記者がスパイ容疑で拘束。独裁体制の人質戦略から距離を取り近づくな>
ロシアがファシズムを完全に受け入れた。今や、専制国家のイランや中国と類似する要素を示し始めている。
最大の共通項の1つが「人質戦略」だ。ロシアの残虐行為との戦いに協力する西側諸国の出身者は今すぐ、この国を脱出しなければならない。
ウクライナ侵攻はゲームのルールを変えた。ロシア政府は国外で虐殺を行う一方、国内では疑心暗鬼を強めている。アメリカのパスポートは身の安全の保証にならない。それどころか、ロシア当局の注意を引く可能性が高い。
ロシアでは近年、米女子プロバスケ選手や元米海兵隊員が逮捕される事件が起きている。アメリカとの交渉材料として利用するのが目的だ。
さらに3月下旬、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのエバン・ゲルシュコビッチ記者が、スパイ活動を行ったとして拘束された。米国籍のジャーナリストがロシアで、スパイ容疑で拘束されるのは冷戦終結以来、初めてだ。
ゲルシュコビッチがロシアへ来た年に筆者はロシアを去ったが、誠実な人物で、優れた書き手であることは知っている。ロシア市民の物語に関心を抱く彼は、この国を愛していた。国家の中枢に潜む闇については百も承知でも......。
ゲルシュコビッチは拘束前、危険が増していることを認識していた。そのことは本人のツイートから見て取れる。
それでもロシアにとどまったのは、勇気と使命感が理由だろう。拘束以来、オンラインで目にする「被害者たたき」には、本当にぞっとする。
政治的理由で拘束された体験を持つもう1人の勇敢な記者、ジェイソン・レザイアンは先日、「ロシアの主張を繰り返すこと」は避けるべきだと発言した。そのとおりだ。
米紙ワシントン・ポストのテヘラン支局長だったレザイアンは2014年、イランで拘束された。だからこそ、ロシアの戦略がどれほどイランと共通するか、よく分かっている。ゲルシュコビッチの拘束は長期間に及ぶだろう。有利な取引が実現するまで、ロシアは彼を放さないはずだ。
中国でも事件が相次ぐ
政治的に不安定な状況では、ニュアンスを読み解く必要がある。ゲルシュコビッチの拘束は、ロシアに残る米国民への明らかな警告でもある。
ロシアへの渡航は、ロシア系市民でも(いや、それなら特に)やめるべきだ。これまでも安全ではなかったロシアは、今や地雷原と化している。
世界各地では、アメリカ人の拉致・拘束事件が驚くべき頻度で発生している。ロシアは、その可能性がとりわけ高い国の1つにすぎない。
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