ウクライナ戦争へのNATO参戦は...「あるとしたら空軍」 河東哲夫×小泉悠
THE END OF AN ENDLESS WAR
――アメリカには「ウクライナ疲れ」的な感情も広がっています。来年は大統領選もある。大統領選で誰が勝つかによって、ウクライナ戦争が変わる可能性があるし、ウクライナ戦争が大統領選の結果を変える可能性もあります。
■河東 アメリカにとっては米軍の兵士が(ウクライナに)出るということではなく、どこまでカネと兵器を供給するかという話です。そうするとまだアメリカ側には余力があって、国民自体の問題にはなってない。
国民は世論調査を取れば一応ウクライナ支援を支持していますが。何が決定的かというと、共和党と民主党の争いでウクライナ戦争がどう扱われるかということに関わってくると思います。ウクライナが負けつつあることを共和党が政権批判の材料にすれば、バイデン政権はウクライナを支えようとするかもしれないが、逆にあっさり手を引くかもしれない。共和党と民主党の争い次第だと思います。
■小泉 そもそもこの問題って、アメリカの有権者の関心をどのくらい呼んでいるんでしょうか。去年の上下両院の中間選挙を見ていると、ほとんど話題になっていなかった気がするんです。人工妊娠中絶とか、人々の生活に密接に関わる問題のほうは議論があった。もちろんウクライナの問題も取り上げられなかったわけではないんだけど、中心的な論点ではなかった気がするんです。
この傾向が大統領選まで持ち越されるのであれば、アメリカの有権者の中ではスルーされていくんじゃないか。この前ニューヨーク・タイムズ紙に、アメリカ人は依然としてウクライナへの軍事支援を支持はしているんだけど、段々その支持が鈍っているという記事がありました。1年続いていますから当然そうなると思うんですが、アメリカ人には強烈な賛成も強烈な反対もそもそもないんじゃないか、という気が僕はします。
※続きを読む:ウクライナ戦争はいつまで?「3年目が見えてくる」その理由 小泉悠×河東哲夫
小泉 悠(軍事評論家)
東京大学先端科学技術研究センター(グローバルセキュリティ・宗教分野)専任講師。著書に『ウクライナ戦争』、『「帝国」ロシアの地政学』など。
河東哲夫(本誌コラムニスト、元外交官)
外交アナリスト。ロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン「文明の万華鏡」主宰。著書に『日本がウクライナになる日』、『ロシアの興亡』、『遙かなる大地』(筆名・熊野洋)など。
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