最新記事
ジョージア

デモ隊に放水銃の攻撃、ジョージア「ロシアそっくり法案」はなぜ今だったのか

Georgians Lean West

2023年3月13日(月)19時30分
エイミー・マッキノン(フォーリン・ポリシー誌記者)

230321_28p46_JOA_04.jpg

催涙ガスを浴びた女性(首都トビリシで) ZURAB JAVAKHADZE-REUTERS

ジョージア政府は既に、ミハイル・サーカシビリ元大統領の扱いをめぐり国際的な批判を浴びている。サーカシビリは2003年のバラ革命で強権体制を倒し、強力な親欧米・反ロシア路線を主導したが、在任中の権力乱用を理由に禁錮6年の判決を受けた。

ところが、サーカシビリは収監中に体調を大きく崩し、国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチとアムネスティ・インターナショナルは今年3月2日、治療目的の釈放をジョージア政府に訴えた。さもないとサーカシビリは、「死亡、生涯にわたる障害、または心身に取り返しのつかないダメージを受ける重大なリスク」があるという。

一方、政府寄りのメディアでは、数カ月前から複数のNGOの活動を攻撃する記事が目立つようになっていた。こうしたNGOは欧米の政府から多額の支援を受けており、ジョージアの国益を傷つける活動をしているというのだ。

「政府はわれわれのイメージを失墜させたと確信したところで、(外国代理人法案を)押し通そうとした」と、選挙監視団体「公正な選挙と民主主義のための国際社会(ISFED)」のエグゼクティブディレクターを務めるニーノ・ドリゼは指摘する。

これに対して、ジョージアの夢のイラクリ・コバヒゼ党首は、「(外国代理人法案は)ロシアと同じ法律だというキャンペーンがあるが、これは嘘だ。また、法案が通れば、ジョージアがEU加盟から遠ざかるという声もあるが、これも嘘だ」と主張する。

外国のスパイと同義語

ジョージアの夢は、外国代理人法案はむしろ、アメリカの外国機関登録法と同じだとして、法案を正当化する。

だが、アメリカの法は外国政府のためにロビー活動を行う者にその関係の公表を義務付けるものであり、ジョージアの外国代理人法案になぞらえるのは「大間違いだ」と、米上院外交委員会のジーン・シャヒーン上院議員は憤る。

2月にジョージアを訪問したシャヒーンは、外国代理人法案は、「ロシアがメディアとNGOの弾圧を始めたときに使った法律とほぼ同じだ。ジョージアは同じことをやろうとしている」と警告した。

TIジョージアは、「外国の代理人」という指定は、市民団体に対する不信感を植え付ける狙いがあると語る。「該当組織は、外国のスパイだとか、国家転覆を図る反逆者、あるいは外国が操る組織と見なされてしまう」という。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、イラン最高指導者との会談に前向き 

ワールド

EXCLUSIVE-ウクライナ和平案、米と欧州に溝

ビジネス

豊田織機が株式非公開化を検討、創業家が買収提案も=

ワールド

クリミアは「ロシアにとどまる」、トランプ氏が米誌に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中