「本物と見分けられない」インドの寺に「象ロボット」登場...背景には残酷な現実が
写真はイメージです Mazur Travel-Shutterstock
<南部ケララ州の寺院で飼育されるゾウは、儀式や芸の訓練のため虐待などの過酷な状況に置かれることが多く問題視されている>
インド南部ケララ州にある寺院に、見た目だけでなく動きまで本物にそっくりなゾウのロボットが登場し、大きな注目を集めている。インドには儀式にゾウを使う寺院がいくつも存在するが、その現場ではゾウが酷使されたり虐待されたりするケースが多く、動物保護の観点から批判の声も高まっている。
■【動画】動きも超リアル! インド南部ケララ州の寺院に登場したロボットゾウ
本物のゾウの代わりにロボットのゾウを導入したのは、イリンジャダッピリー・スリ・クリシュナ寺。ゾウに豪華な衣装をまとわせて行う大掛かりな行事で有名なこの寺院が最近、本物そっくりなロボットゾウの「イリンヤダッピリー・ラマン」をお披露目した。
PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)インドが共有した動画には、本物と同じサイズのロボットゾウが、本物のゾウさながらに耳をパタパタと動かす様子が映っている。ロボットゾウは、口や尾、鼻なども動かすことができる。
イリンヤダッピリー・ラマンを生み出した開発チームのメンバーであるプラサンス・プラカーシャンは、「我々が開発したロボットゾウには5つのモーターが内蔵されており、自動で耳や尾、頭や口を動かすことができる。胴体の制御は手動で行われる」と述べた。
飼育ゾウは訓練のために厳しい罰を受けることも
ロボットゾウの導入は、同寺院が今後、生きているゾウを儀式に使わないと宣言したことを受けて、PETAインドが寄贈したものだ。ロボットゾウの導入に対しては、映画俳優のパールバティー・ティルボトゥから活動家に至るまでの幅広い人々から、動物を虐待することなく儀式を行う取り組みだとして称賛の声が寄せられている。
ゾウはケララ州の文化にとって重要な存在で、インド国内で捕獲されたゾウの5分の1が同州で飼育されているという。著名な寺院には、独自にゾウを飼育しているところが多く、まるで人間の有名人のようにそれぞれのファンまで存在している。
しかしゾウの飼育や儀式での使用には、賛否両論がある。PETAインドによれば、捕獲されたゾウは家族や元の生息環境から引き離され、最終的には鎖につながれて一生を過ごすことになる。捕獲されなければ経験していたはずの自然な生活からは程遠い生活を強いられ、儀式や芸などの訓練のために「厳しい罰」を与えられることも多い。
PETAインドは「捕獲・飼育されているストレスから、ゾウは異常行動を取るようになる」と指摘し、さらにこう続けた。「ストレスがピークに達して耐えられなくなると逃げようとして暴れ、人間をはじめとする動物や建物などに危害を加えることも多い」
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