「独裁者」習近平の陰に隠れた「最弱」首相...それでも改革を貫いた李克強が遺したもの
Li's Real Legacy
李が習に本気で盾突いたことは一度もないが、彼が党のエリートの間に推し進めた改革主義的な価値観は習に挑戦を突き付けてきた。昨年8月中旬、李は深圳を訪れて鄧小平の像に献花し、「黄河と長江(揚子江)は決して逆流しない」と発言。これは、鄧が唱えた改革開放路線を絶対に後退させないという意味に受け取れる。
この発言を、引退が近い李の最後の訴えと受け取る向きもあった。だが李がこう語ったという事実は、党大会を前に改革主義が共産党内で論点になっていることを示してもいた。
もっと言えば、李が改革主義の政策課題に対して明確に支持を表明できたということは、共産党に改革主義への根強い支持が残っているという証しだった。
その点が明らかに見て取れたのが、習が10月の党大会の後に行った重要演説だ。
李の努力が最終的に勝利した
演説の中で習は、「中国の改革開放の扉はますます大きく開かれていく」と宣言。中国政府はその数週間後、パンデミック中に廃止された改革主義の目標を迅速に復活させようと行動を起こした。国境は再び開かれ、企業は自由な活動を許され、規制当局による取り締まりは打ち切られた。
その後も李は、改革主義を擁護する姿勢をさらに強めた。今年1月に国家市場監督管理総局で行った挨拶では、中国の市場経済を引き続き拡大することの重要性を説いた。2月に中国国家発展改革委員会と財政省を視察した際にも、改革開放の取り組みを継続する重要性を強調した。
これは、改革主義の実現を目指す共産党の強い意志を復活させようという李の努力が最終的に勝利したということだろう。それでもこの勝利は、李の個人的な権力の復活につながらなかった。
しかしこの勝利は、中国の政治と経済における改革主義の価値観がとてつもなく大きな力を持っていることを示した。それは、習のような絶対的指導者が持つ権力さえしのぐ力だ。
もちろん、習の反改革主義的なアプローチの多くの部分は今も変わっていない。中国が突如として、勢いのあった改革の時代にタイムスリップしたわけではない。しかし中国政府が正統性を保つ条件として、経済的な繁栄は今も欠かせない。
李は政界から退く準備を進めているが、彼が擁護し続けてきた改革主義の価値観はこれからも生き続ける。彼にとって任期満了間近に改革主義が再び重要な位置を占めたことは、10年間務めた首相職の最も重要なレガシーの一部となるだろう。
From thediplomat.com
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