ネタニヤフのやりたい放題──イスラエルの「司法の独立」を弱体化する「改悪」に国際社会はチクリと「口撃」
SABOTAGING DEMOCRACY
ネタニヤフは、支持勢力を満足させる政策を取る必要がある。そのため、数学や英語、理科などの主要教科を教えない超正統派系の学校のために潤沢な予算を確保することや、ユダヤ教神学校の生徒を兵役免除とすることを公約に掲げた。
国会の120議席中64議席を占める連立与党議員の約半数が、大臣と副大臣に就いた。新しい閣僚職がつくられ、任務が相いれないポストを兼任する人事も行われた。
例えばベツァレル・スモトリッチは財務相であると同時に、「第2国防相」としてヨルダン川西岸地区を扱う民生局を担当する。宗教的シオニスト党を率いるスモトリッチは占領地区の完全併合を目指し、21年に民生局廃止法案を提出した。彼に占領地区を任せるなら、併合を認めたのも同然だ。
外相は第1党であるリクードの2人が交代で務める。こんな人事では、機能不全に陥っている外務省の立て直しなど望めない。再編成された戦略問題省はネタニヤフの盟友ロン・ダーマーが率いる。駐米大使時代にイランとの核協議に水を差した人物だ。
バイデン米大統領はアメリカでもイスラエルでも、独立した司法は民主主義の柱だと語った。両国間の関係にとっても必要不可欠だという意味合いだろう。
マクロン仏大統領はもっと率直だ。ネタニヤフに対し、そんな司法改革がまかり通るなら、イスラエルが民主主義への共通の理解を放棄したと見なすと告げたという。問題は、ネタニヤフが共通の理解などというものを持っていたかどうかだが。
シュロモ・ベンアミ
SHLOMO BEN-AMI
イスラエル元外相。世界各地の紛争解決を目指す「トレド国際平和センター」副所長。著書に『戦争の痕、平和の傷──イスラエルとアラブの悲劇』がある。