ネタニヤフのやりたい放題──イスラエルの「司法の独立」を弱体化する「改悪」に国際社会はチクリと「口撃」
SABOTAGING DEMOCRACY
RONEN ZVULUNーREUTERS
<連立政権を組む極右勢力と共に反民主主義の姿勢を強める、ネタニヤフ首相。世界に広がるポピュリズム的強権体制に加担し、「悪例」を提示するだけ>
世界に広がるポピュリズム的強権体制に、また1つ新しい事例が加わった。イスラエルのネタニヤフ首相は司法の独立性を弱める改革に着手し、連立政権を組む極右勢力と共に反民主主義の姿勢を強めている。
イスラエルで民主主義が損なわれるのは今に始まったことではない。残虐なパレスチナ自治区占領は、根本的に民主主義の価値観とは相いれない。しかも、この国では権力の「チェック・アンド・バランス」が弱い。
正式な憲法はなく、国会も一院制。大統領は立法に対する拒否権を持たず、行政府が完全に国会を支配している。昨年12月に発足したネタニヤフの強硬右派新政権は、辛うじて残る最後の権力チェック機能まで奪い去ろうとしている。
提唱している司法改革では、判事指名への政府の影響力を強める意向だ。最高裁が法律を無効と判断しても、国会で過半数の支持があればこれを覆せるようにもするという。
ここまでやれば、ネタニヤフが収賄と背任の罪に問われている進行中の刑事裁判を、国会が止めることも可能だろう。
改革を進める理由について政権側は、近年は司法が過度に積極的な姿勢を示し、国民の信頼や政府の「統治力」が損なわれているためだとしている。これは裏を返せば、法の支配を踏みにじろうとする政権を司法が制止してきたということだ。
ネタニヤフが司法を擁護した時代もあった。2012年には最高裁を弱体化させる法案は必ず阻止すると宣言し、「強力で独立した司法なしに権利は守れない」と熱弁を振るった。だが、これは打算に基づく主張だった。
司法を擁護することが、彼の政治家としての最大の目標である「権力の維持」に好都合だっただけだ。
目を覆うばかりの新閣僚人事
その状況は変わった。今のネタニヤフは、犯罪者と利権屋を頼りにしている。新政権の内相は詐欺で有罪判決を受けていた(1月に罷免)。国家治安相は極右排外思想を持ち、人種差別の教唆などで有罪判決を8回受けた。
住宅相は超正統派ユダヤ教系学校への政府補助金をかすめた。