最新記事
事故

韓国、宙を飛んだ暴走SUV 運転ミスか車両の欠陥か、立証義務は誰にある?

2023年3月3日(金)21時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
クルマの間をかすめて宙を飛ぶSUV

暴走したSUVは宙を飛び、ほかの自動車の間をすりぬけるようにして…… SBS / YouTube

<高齢者ドライバーの運転する自動車が暴走。果たして事故原因は......>

昨年末、韓国の北東部にある江原道江陵市(カンウォンド・カンヌン)で自動車の暴走事故が発生。運転していた60代女性A氏が重傷、同乗していた12歳の孫が死亡した。

これだけなら、日本でもよくある高齢者による暴走事故として片付けられるものだが、亡くなった子供の父親が事故車両の欠陥疑惑を提議。PL法改正を求めた請願が韓国国会も巻き込んだ議論に発展しようとしている。ソウル新聞など韓国主要メディアが報じた。

孫を乗せた帰宅途中、突然クルマが......

2022年12月6日午後4時ごろ、江陵市でA氏(68)が運転したSUV乗用車が暴走、道路脇の地下通路に落下し大破する事故が起きた。後部座席に同乗していたA氏の孫(12)が心肺停止状態で病院に運ばれたが亡くなった。 A氏も大きな怪我をして病院で治療を受けた。

当時A氏が運転していたSUVは、交差点の前で前方の車に衝突後、速度を上げて暴走した。A氏は「どうして動かないの!? 大変!」と言って、孫の名前を叫んだが、SUVはその後も速度を落とさず600mほどをさらに走行。周囲の車を避けながら走っていたA氏のSUVは4車線の道路を飛び越えた後、地下通路に転落した。

その後、警察はA氏を交通事故特例法違反により刑事立件したが、家族たちはA氏に罪がないことを訴える嘆願書を提出。また事故の原因は「車両の欠陥による急発進だ」として、2月にはメーカーを相手に民事訴訟を起こした。

PL法改正を請願

今回の事故で12歳の息子を失ったイ・サンフン氏は2月23日、「欠陥原因立証責任転換製造物責任法」改正のため、国会の「国民同意の請願」運動を開始した。これは登録から30日以内に5万人以上の同意を受ければ国会で審議されるというものだ。

イ・サンフン氏は「自動走行システムが実用化され電動化される自動車では、車両の問題による急発進事故が起きる可能性が常にある。ソフトウェアの欠陥は事故発生後にその痕跡を残さないため、その立証が事実上不可能だ。ところが現行の製造物責任法(PL法)は急発進が疑われる事故が発生しても、車両に欠陥があることを非専門家である運転者や遺族が立証するように規定している」と車両に欠陥があったとしても立証することの難しさを訴えた。

そして「このような不合理で不公正な製造物責任法条項を、少なくとも急発進が疑われる事故では、自動車メーカーが急発進の欠陥がないことを立証するように立証責任を転換させる法改正が緊急に必要だ」と請願趣旨を説明した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ戦争志願兵の借金免除、プーチン大統領が法

ワールド

NATO事務総長がトランプ氏と会談、安全保障問題を

ビジネス

FRBが5月に金融政策枠組み見直し インフレ目標は

ビジネス

EUと中国、EV関税巡り合意近いと欧州議会有力議員
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中