最新記事
安楽死

我が子5人を殺し自殺に失敗した母親は、16年後の同じ日に安楽死を選んだ

2023年3月4日(土)16時35分
田中ゆう

ジュヌヴィエーヴ・レルミット YouTube/Les news insolite

<2007年にベルギーを揺るがした、実子5人殺害事件。犯行におよんだ母親は精神的に不安定であると弁護されたが、陪審員は計画的な殺人で有罪とし、終身刑を宣告されていた>

母親が我が子5人を手に掛ける──当時衝撃が走った事件から16年目の2月28日、犯人のジュヌヴィエーヴ・レルミットは安楽死した。弁護人を務めるニコラ・コーエン氏が地元メディアにその事実を認めた。

この事件は首都ブリュッセルの南西およそ30kmに位置するニヴェルという小さな町で起きた。

2007年2月28日、レルミットは、3歳から14歳の息子と娘4人を、夫の留守中に殺害し、自らも命を絶とうとした、しかし自殺に失敗し、結局、救急隊を呼び助かった。

【写真】レルミットが手に掛けた5人の子供たち

裁判を経て、2008年に終身刑の判決が下った。2019年には精神病院に移されていた。

死を望み続けたレルミット

ベルギーを含む欧州連合(EU)では死刑は認められていない。ベルギーでは1996年8月1日に死刑制度が廃止され、2015年1月には初めて受刑者に安楽死の処置が実施された。

ベルギーの法律では、肉体的苦痛だけでなく、心理的にも癒えず、「耐え難い」と判断された場合、安楽死の選択肢がある。この場合、本人が安楽死したいことを自覚し、理性的かつ一貫した方法で、その希望を表明できることが条件になる。

レルミットはこの条件とプロセスをクリアしたということになる。そしてあの事件の日を、死ぬ日に選んだ。

地元メディアRTL-TVIチャンネルは「(レルミットは)子供たちを尊重するための象徴的な示唆」としてこの日を選んだという心理学者Emilie Maroit氏の見解を伝えている。

当局によると、ベルギーでは昨年2,966人が安楽死によって死亡し、2021年から10%増加。2021年、2022年ともに最も多い理由は「がん」だった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米J&Jトップが医薬品関税で供給網混乱と警告、国内

ワールド

中国、ロシア産LNG輸入を拡大へ 昨年は3.3%増

ビジネス

メタCEO、2018年にインスタグラム分離を真剣に

ビジネス

米国株式市場=小反落、ダウ155ドル安 関税巡る不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 2
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 5
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 7
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    そんなにむしって大丈夫? 昼寝中の猫から毛を「引…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中