子ども2人を大学に通わせられる世帯の約半数は年収1000万円以上
日本では教育費の負担が両親に重くのしかかっている michaeljung/iStock.
<日本で子ども2人を下宿させて私大に通わせると年間500万円近くかかることになる>
昨年の出生数はとうとう80万人を下回った。とどまることのない少子化だが、夫婦が出産をためらう理由として大きいのは、教育費の高さだ。1人ならまだしも、2人目以降の出産はためらわれる「2人目の壁」も指摘されている。これを受けて政府は、子が多いほど税負担が軽くなる「N分N乗方式」なる税制度を検討している。
昔は、子どもは労働力としての性格が強く、出産は働き手を確保する意味合いもあり、低所得層ほど子どもが多い「貧乏人の子だくさん」と言われたりしていた。しかし今はそうでなく、子どもはカネのかかる存在だ。自立のためのハードルは高くなり、20歳過ぎまで学校教育を受けさせるのが常態化している。18歳以降の高等教育では私立校が多く、学費も高い。夫婦が「2人目の壁」を意識するのは当然だ。
実際、2人の子を大学に行かせるのは容易ではない。2017年の総務省『就業構造基本調査』によると、2人の子がいて両方とも大学ないしは大学院に行かせている世帯は約10万世帯。<図1>は、これらの世帯の年収分布図だ。
9万9100世帯のうち、4万5900世帯(46.3%)が年収1000万円を超えている。中央値は966万円で、東大生の家庭とほぼ同じだ。子を2人大学にやるのは並大抵でないことが分かる。
日本学生支援機構の『学生生活調査』(2020年度)によると、私大の下宿生の年間学費は132万円、生活費は109万円、合算して241万円だ。2人の子を下宿させて私大に通わせると500万円近くかかることになる。こう見ると、上記の結果も頷ける。
18歳の子がいる年代の家庭の平均年収(700万円ほど)では、子を2人大学にやるのは簡単ではない。2人の子がいても進学させるのは1人だけで、もう1人(特に女子)には諦めてもらう、という話はよく聞く。それでは忍びないので、子は1人までと考える家庭も多くなるというわけだ。