最新記事
ウクライナ

【現地報告】ウクライナの地雷除去へ! 日本製地雷探知機「ALIS」の研修に迫る

2023年3月13日(月)17時00分
※JICAトピックスより転載
ウクライナ、地雷

<ぬいぐるみに爆弾が仕掛けられている例まであり、現在、ウクライナの国土の30%が地雷や不発弾に汚染されている可能性がある。カンボジアで行われたJICAのウクライナ地雷除去専門家研修プロジェクトに迫った>

2023年1月、カンボジア。気温30度超えの強い日差しが照りつける平原に、地雷探知機の甲高い電子音が響き渡ります。ここは、カンボジア地雷対策センター(CMAC)の研修施設。日本政府はJICAを通して、ウクライナ非常事態庁(SESU)の地雷除去専門職員8人を同地に招き、最新の日本製地雷探知機を使った研修を実施しました。

ロシアの侵略により、現在、ウクライナの国土のおよそ30%が地雷や不発弾などの爆発物に汚染されている可能性があり、その除去には少なくとも10年を要するといわれています。戦後復興を見据え、ウクライナの地雷・不発弾のできるだけ早く安全な除去を目指すJICAの協力プロジェクトに迫ります。

jicatopics20230313mines-02.jpg

ぬいぐるみにも爆弾、500万人が危険にさらされている

「危険物を除去し、人々が危険にさらされるリスクを取り除く必要があります。我々は、多くの人道的支援を必要としています」。ウクライナ非常事態庁(SESU)の首席専門官、アルセニー・ディアディチェンコさんは、そう訴えます。

ロシアの侵略開始から1年。ロシア軍が撤退した場所には、地雷やロケット弾などの爆発物が屋内外問わず設置・放置されており、時には、家の中のぬいぐるみに爆弾が仕掛けられていることもあるといいます。こうした危険地域は国土の30%に及び、その周辺には、約500万人が暮らしています。人々が安心・安全に暮らしていくためには、爆発物を一つも取り残さず、100%除去する必要があります。

ウクライナで地雷や不発弾の除去にあたるのが、SESUの地雷除去専門職員です。ロシアの侵略後は人員を増員し、金属探知機を使用しながら爆発物の除去に当たっていますが、その作業は難航しています。そもそも金属探知機はあらゆる金属に反応するため、探知した全ての金属片を掘り出して地雷か否かを判別する必要があり、地雷の除去には膨大な時間を要するのです。

金属探知機+レーダーで地雷を画像化、迅速・効率的な除去へ

そこで、ウクライナの地雷除去を迅速に進めるため、日本製の地雷探知機「ALIS(エーリス)」の活用が期待されています。「Advanced Landmine Imaging System(先進的な地雷の画像化システム)」を略したALISは、金属探知機と地中レーダーを組み合わせた地雷探知機です。金属探知機が検知した物体を、地中レーダーが画像化。付属端末のモニターでその形状を目視することができるため、迅速かつ効率的に地雷か否かを判別できます。

「従来の金属探知機と比較して、格段に早く効率よく地雷を検知することができるため、ウクライナの人々の安全を守るという、差し迫った課題に役に立つはずです」。そう話すのは、ALISの開発者、東北大学の佐藤源之教授です。今回の研修では、佐藤教授自らカンボジアに赴き、SESUの職員にALISの操作方法を指導しました。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中