クアッドでなく「I2U2」、トルコ救援に動いたインドの狙い
訪印したエジプトのシシ大統領(左)とインドのモディ首相(1月25日、ニューデリー) ADNAN ABIDI-REUTERS
<インドと中東諸国の間の貿易・投資はこの10年で倍増。軍事面でも、インドはイスラエル兵器の最大の輸出先だ。インドは今、東方ではなく西方に目を向けている>
トルコ・シリア大地震で甚大な被害が発生すると、インドは非常に素早い動きを見せた。
直ちに100人の救援隊員と探索犬を被災地に派遣。医療スタッフと医療機器、医薬品も現地に送り、臨時の仮設病院も設営した。
これは人道主義の精神だけに基づいた措置ではない。この行動は、中東への関与を強めることを目指す政策の一環でもある。
インドは、長年の友好国であるイランに加えて、エジプト、イスラエル、ペルシャ湾岸のアラブ諸国との関係も強化しようとしてきた。
アメリカの中東への関与が減少し始めているなかで、インドがこの地域の有力プレーヤーとして台頭する可能性も浮上してきている。
実際、ここにきて中東でのインドの存在感は高まりつつある。この1月には、74回目のインド共和国記念日の式典にエジプトのシシ大統領が主賓として出席した。
昨年の7月には、インド、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)、アメリカで構成される新しい枠組み「I2U2」の初めての首脳会談がオンラインで開催された。これは、インド太平洋地域で、日本、アメリカ、オーストラリア、インドで構成される「クアッド」の中東版とも呼ぶべき存在である。
インドとしては、米中対立やロシアのウクライナ侵攻によって中東の国際政治で力の空白が生じ別の勢力が現れることにより、自国の国益を害されないようにしたいという思いがある。
中東はインドにとって、投資とエネルギーの重要な主力供給地といえる。それに、中東諸国とインドは、イスラム過激派の活動やテロなど、安全保障上の関心事項も共有している。
中東とインドの経済的な結び付きは極めて強い。
現在、ペルシャ湾岸諸国に居住するインド人はおよそ890万人にも上る。国外で働いているインド人の祖国への送金額の半分(年間800億ドル)は、ペルシャ湾岸諸国からのものだ。
インドと中東諸国の間の貿易と投資もこの10年間で飛躍的に増加している。UAEはインドにとって第3位の貿易相手国、サウジアラビアは第4位の貿易相手国だ。