犠牲になっても、今なおロシアを美化してすがる住民たち──言語、宗教、経済...ウクライナ東部の複雑な背景とは
LIVING UNDER SIEGE
無人の幼稚園の前を大型の戦車が通過し、すぐ近くでウクライナ軍が反撃する大砲の音がした。ロシア軍の陣地はここから東へ3キロのところにある。私たちは3カ所で配給を行ったのち、急いで車に飛び乗った。
その後の2月2日、バフムートで住民の脱出を支援していたアメリカ人のボランティアが犠牲になった。救急車で移動中に砲撃を受けたという。
ロシア軍の攻撃によりこの1年で150人ほどの住民が殺害された街は、民間軍事会社ワグネルの傭兵を投入するロシア軍の猛攻撃で包囲される寸前だ。2月7日、私たちは支援物資を持って再び現地に向かったが、周辺の村にも攻撃が及びバフムートに近付くことはできなかった。
数週間遅れでバフムートと同じ状況になっているのがシベルスクだ。街の病院を訪ねてみると、真っ暗な地下倉庫で高齢者を中心に10人近くが息を潜めていた。病院に勤めるオレナ・バンダレンケ(51)は「街で犠牲になった人は100人近くになると思います」と話す。
病院の裏には着弾したロシア軍のミサイルの向こうに、木で組んだだけの墓標があった。中には花輪が供えられたものもある。木に書き記された死亡日は昨年5月以降のものばかりだ。
ウクライナ軍が発射するミサイルの音が閑散とした街に響く。近くにいたウクライナ兵が別れ際にこう言った。「われわれは抵抗する準備はできているが、いくつかの領土を失うかもしれない」
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