核戦力強化をはかる中国を核軍備管理の枠組みに引き入れることは可能か
核軍備管理に共通の利益を見いだすことができるか否か
2030年代に米中、あるいは米中ロが核軍備管理や軍縮に乗り出すかは各国政府の外交・安全保障戦略、財政負荷状況、そして世論の圧力などによって形成されると考えられる。
中国が核軍備管理の枠組みに一切入らないという可能性もありうるだろう。
こうした背景要因の中で、これらの国が軍備管理・軍縮に共通の利益を見いだすことができるかが重要となる。
台湾有事が迫ると言われ、ウクライナ戦争が進行中の現時点では短期的には考えづらいものの、中長期的な緊張緩和の基調を米中ロの指導者が生み出すことができるか否かも今後の安定の鍵となると言える。
核保有国に挟まれたわが国もこうした外的環境の変化を考慮しながら、米国・アジア・欧州などのパートナー国と協調しながら、効果的に抑止力を強化していく必要がある。
また、わが国は唯一の被爆国として国際社会における規範形成の力を有している。こうした立場をうまく活用することで、将来における新たな核軍備管理の構築に一定の貢献ができる可能性がある。
■前回の記事はこちら>>中国の核戦力能力向上で何が起きる? 核軍拡競争、偶発的エスカレーションの危険性
<参照>
Poole, "History of Acquisition in the Department of Defense", pp.274-276.
Ambrose, Matthew J, "The Control Agenda", 2018, p.20
Ibid, p.28
Arms Control Association, "Fifty Years Ago, the First Strategic Arms Limitation Talks Began", 2019
Ibid, pp.44-45
Ambrose, Matthew J, "The Control Agenda", p.51
Richard Nixon Library, White House Photo Office Collection (Nixon Administration), Nixon White House Photographs, WHPO-9204-18
Air Land Sea Space Application (ALSSA) Center, "The Use of Emerging Disruptive Technologies by the Russian Armed Forces in the Ukrainian War", 2022.10
[執筆者]
池上敦士
株式会社富士通総研 上級研究員、一般財団法人防衛技術協会 客員研究員。科学技術・安全保障分野を中心に中央省庁向けの政策立案支援を経験。防衛技術ジャーナルや防衛年鑑に寄稿。慶應義塾大学経済学部卒、ハーバードケネディスクール在学中。
※本誌に掲載された内容は筆者個人の見解であり、所属組織としての見解を示すものではありません。