「アメリカは助けに来ない」──すでに中国の「認知戦」が効果を挙げる台湾の打つ手とは?
A DIFFERENT GAME
この手法が功を奏したのは、中国が数十年前から下地をつくってきたおかげだ。国民党主席(当時)の連戦(リエン・チャン)が「融和」のため訪中したのは05年。
以来、主に国民党の政治家や台湾軍の元司令官、実業家、歌手、映画スターの訪中が相次ぎ、中国で富を得た人々が台湾の反共派の大手メディアを買収して、中国共産党の宣伝機関に変えた。
統一地方戦で勝利した青色陣営は、来年の総統選で民進党政権を倒す構えでいる。彼らが勝利すれば、中国は武力なしで勝利を収める。そうした事態を防ぐため、台湾の同盟相手にできることはあるのか。
注目すべきことに、台湾に対する中国の認知戦は偽情報に依拠していない。事実や論理を心理戦の兵器に包み込んで、信用を破壊しようとしている。アメリカは助けに来ないという主張の「根拠」は79年の米台断交だ。
冷戦下の当時、ソ連をにらんで中国と国交正常化したアメリカは、代償として台湾を切り捨てた。ならば、条件次第でアメリカは再び台湾を裏切るはずだ──。
この危険な主張を阻止すべく、アメリカは大胆な行動で、台湾防衛という約束への信頼を再構築する必要がある。
具体的には、79年以前のように台湾に米軍基地を構えて適切な人員・兵器を配備し、中国の神経を逆なでする言動のコストを自ら負担してはどうか。台湾が認知戦に屈しないよう手助けし、インド太平洋でのアメリカの国益を守るには、こうした道しかあり得ない。
練乙錚(リアン・イーゼン)
YIZHENG LIAN
香港生まれ。米ミネソタ大学経済学博士。香港科学技術大学などで教え、1998年香港特別行政区政府の政策顧問に就任するが、民主化運動の支持を理由に解雇。経済紙「信報」編集長を経て2010年から日本に住む。
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