最新記事

米中関係

米軍が気球撃墜に使った空対空ミサイル「サイドワインダー」は世界最高の優れものだった

Was 'Sidewinder' Missile Biden's Best Option Against Unidentified Objects?

2023年2月14日(火)17時56分
ニック・モドワネック

サイドワインダー・ミサイルを戦闘機に装着する台湾軍兵士(2018) Tyrone Siu-REUTERS

<上空の気球を撃墜するのは意外と難しい。穴を開けても萎まないし、燃えないし、弾も命中させにくい。そこで登場した「サイドワインダー」の性能とは>

米国防総省は1月12日、カナダとの国境に近くで未確認の飛行物体を撃墜したと発表した。ジョー・バイデン米大統領が米軍に対して、北米上空を飛行する物体の撃墜を命じたのは、過去10日間で4回目となる。

米軍が12日に撃墜したのは、ミシガン州にあるヒューロン湖の上空を飛行していた物体だ。ミシガン州選出のジャック・バーグマン下院議員(共和党)は、「八角形の構造物」がF16戦闘機によって撃墜されたと言及。米国防総省も、F16戦闘機が空対空ミサイル「AIM-9X(サイドワインダー)」で撃墜したことを確認した。同ミサイルは世界最高の空対空ミサイルといわれ、1発あたりの価格は最高47万2000ドルとされている。

これに先立ち10日にはアラスカ北部上空で、11日にはカナダ北部のユーコン準州上空で未確認の飛行物体が撃墜された。この2つとヒューロン湖上空で撃墜された飛行物体はいずれも、2月4日にサウスカロライナ州沖で撃墜された中国の気球よりも小さく、飛行高度もずっと低かった。

米ジョージタウン大学外交大学院で国際政治・安全保障プログラムの共同議長を務めるジョディ・ビットリ教授は本誌に対し、12日の飛行物体撃墜にサイドワインダーが使われたのは、パイロットにとって扱いやすいミサイルだからだと指摘した。

近距離から発射が可能

米シンクタンク「カーネギー国際平和財団」の非常勤研究員でもあるビットリは、「(サイドワインダーは)空対空ミサイルとしては比較的安価でもある」と述べた。「視程内射程(約37km以内の射程で使用され)のミサイルのため、パイロットが気球に接近し、標的を目視で確認した上で比較的近い距離から発射して、標的に命中したことを確認することができる」

また発射前に標的をロックして自動追尾することができるため、気球の熱源があまり高温ではない場合でも、標的を特定することが可能だ。

サイドワインダーの発射には、ウクライナでの戦争で有名になった高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)を使うこともできるが、ジェット戦闘機を使用したことも、より理にかなっていると彼女は述べた。

「空対空ミサイルは、空中の標的を捉えて排除するように作られている」と彼女は述べる。「ハイマースは、空中ではなく地上にある標的を攻撃するように作られたミサイルシステムだ。どちらもミサイルだからといって、互換性がある訳ではない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中