最新記事

米中関係

米軍が気球撃墜に使った空対空ミサイル「サイドワインダー」は世界最高の優れものだった

Was 'Sidewinder' Missile Biden's Best Option Against Unidentified Objects?

2023年2月14日(火)17時56分
ニック・モドワネック

さらにビットリはこう述べた。「ハイマースを使おうとした場合、必要な高度(約1万1200メートル超)に到達できたとしても、標的に向かって巨大な金属の塊や爆発物を発射することになる。それらはほぼ確実に標的には命中せず、(重力があるために)かなりの速度で地上に落下するだろう。かなり危険だ」

米シンクタンク「ケイトー研究所」の政策アナリストであるジョーダン・コーエンは、撃墜にどのような兵器が使われるかには、気球の組成が大きく関係してくると本誌に語った。

気球は中にヘリウムを満たしているため、焼夷弾は「使えない」とコーエンは言う。ヘリウムも、そして多くの場合は球皮(気球の風船部分)も、燃えない素材でできているからだ。酸素が薄い高高度では、そもそも物質は燃えにくい。

「第一次大戦で経験したことだが、たとえ気球に小さな穴を開けても、急激にガスが吹き出して墜落する、ということにはならない」と彼は言う。「もし小さな穴を幾つも開ければ、気球の動きが不規則になり、アメリカの領空から出て行ってしまうかもしれない」

「空中から近距離でミサイルを発射した方が、もともと飛行ルートが予測しにくい気球に命中させられる可能性が高くなる。サイドワインダーはミサイルの目にあたる優れたシーカー(探知機)と強力なエンジンを持っており、発射時の操作性も大幅に向上している」

気球の狙いは

コーエンはまた、サイドワインダーの弾頭は爆風と破片を環状に撒き散らすようにできているので、標的に命中しなかった場合でも弾頭が爆発し、標的にダメージをもたらすことができると指摘した。

米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」で大戦略プログラムのディレクターを務めるラジャン・メノンは本誌に対し、最近の一連の出来事で、バイデンは追い詰められていると指摘した。

「アメリカの領空を偵察気球らしきものが飛行しているというニュースが流れれば、大統領には決断を下すよう求める圧力がかかり、何らかの対処を講じなければならない」と彼は述べた。

しかも今回の気球騒動は、米中間の緊張が「悪い状態から最悪の状態に悪化しつつある」中で起きたとコーエンは指摘する。

一連の出来事は依然として「不可解」なままだ。

「中国が米中間の緊張を激化させるために気球を送り込んだのかどうか」が一番の問題だとメノンは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報

ビジネス

独総合PMI、11月は2月以来の低水準 サービスが

ビジネス

仏総合PMI、11月は44.8に低下 新規受注が大

ビジネス

印財閥アダニ、資金調達に支障も 会長起訴で投資家の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中