「韓国は盗品すら返さない国という風評を危惧する声も」......対馬から盗まれた仏像、韓国の反応とその顛末
一方、韓国検察は即日控訴し、併せて「金銅観音菩薩坐像仮執行引き渡し強制執行停止申請」を提出した。検察は浮石寺に返還すると毀損が進む可能性があり、また、高裁や最高裁で判決が覆されたとき、仏像の回収が困難になると考えた。
海神神社に返還された「銅造如来立像」は毀損していて、外交摩擦を危惧した日本側は、窃盗団の移送の過程で毀損したという韓国側の弁明を受け入れている。高裁は検察の主張を妥当と判断し、浮石寺への引き渡しを留保した。
大田高裁は18年6月に開かれた控訴審で和解案を提示している。仏像を日本に返して複製品を作るという案である。「千年万年が過ぎると新しい仏像も意味を持つし、韓国と日本に双子の仏像ができる」と提案したが、浮石寺が拒絶した。
大田高裁は浮石寺の所有権を認めた一審判決を取り消した。観音像が倭寇に略奪された可能性に言及しながらも「当時の浮石寺と現在の浮石寺が同一の宗教団体ということは立証できず、正規の手続きで譲り受けたという観音寺の主張も確認は難しいが、観音寺が法人化した1953年から2012年まで60年間占有しており20年の取得時効が成立する」と判決理由を説明した。
韓国検察は、一定期間、占有すると所有権が認められる取得時効を主張し、参考人として出廷した観音寺の田中節竜住職も仏像は16世紀に同寺を創建した僧侶が正当に韓国から持ち帰ったもので取得時効が成立していると主張していた。
韓国は盗品すら返さない国という風評を危惧する声
韓国仏教界は、浮石寺への引き渡しを求めるが、朝鮮日報は日本に返すべきだと主張する。同紙は社説で、浮石寺が略奪されたと主張するなら国際法が定める略奪文化財の手続きを行うべきだと論じている。正論と言えるだろう。韓国文化財庁も略奪された文化財は戻すのが原則だが、もし倭寇が略奪したことが確認されたとしても、日本に返還してから返してもらう過程を経なければならないと述べている。また、韓国は盗品すら返さない国という風評を危惧する声もある。
仏像を保管する国立文化財研究所は早急な解決を求めている。変色や錆など毀損が激しいが、盗難証拠品の保存処理は認められていない上、日本への返還が決まると韓国の修復が新たな摩擦を引き起こしかねない。日本への返還が急がれる。