最新記事

ウクライナ侵攻

ロシア戦車がうっかり味方数人を轢く衝撃映像の意味

Russian Tanks Accidentally Run Over Their Own Troops in Shocking Video

2023年2月13日(月)17時14分
イザベル・バン・ブリューゲン

ロシア軍の侵攻前、訓練に励むウクライナ陸軍部隊(2022年2月10日、ハルキウ) Vyacheslav Madiyevskyy-REUTERS

<ロシアは過去24時間で戦車13両、装甲車12両、兵員900名を失ったとウクライナ軍は12日に発表した。さもありなんと思わせる滑稽なほどの映像が暴露された>

ロシアの民間軍事会社、ワグネルと関係のあるテレグラムのチャンネル「グレーゾーン」が、ロシア軍の戦闘車両が兵士を轢いたところとみられる動画を投稿した。

ワグネルは現在、ウクライナ東部の包囲に加わっている。動画が撮影されたとみられるのは、ウクライナ東部の町ブフレダルで、ここ数週間激しい攻防が続いている場所だ。

ウクライナ軍は9日、ロシア軍がブフレダルをめぐる戦闘で数十台の軍事車両を失ったと発表している。

グレーゾーンが投稿したのは、ブフレダルの攻防戦のさなかに最近撮影されたとみられる動画だ。

「ブフレダルではまったくひどいことが起きている。それは何度も繰り返されてきたことであり、かつて問題を批判していた部隊の指揮下でも起きている。それでも問題は終わらない」とのコメントが付いている。

「もちろん、わが軍は敵に対してもダメージを与えている。だが敵の動画を見ると、わが軍には司令部レベルで指揮命令に今も危険な問題があることが見て取れる」

投稿によれば昨年、あるロシア軍の部隊から地元の沿海地方の知事に対し、「無能な」指揮官たちのせいでブフレダル近郊のパブリフカをめぐる戦いで苦戦を強いられたと抗議する声が上がったという。この時、名前が挙がったのがルスタム・ムラドフとズラブ・アフメドフという2人の将官だ。そしてこの部隊は再び、戦闘のただ中にある。

指揮命令の問題が露わ

「悪名高いが英雄的なロシア太平洋艦隊第155海兵旅団はパブリブカの戦闘中、ムラドフとアフメドフ(ムラドフは現在も司令官の座にある)の名前を挙げて沿海地方のオレグ・コジェミャコ知事に助けを求めた。現在、同旅団はブフレダル制圧に向けて戦闘を続けている」と投稿には書かれている。

惨状は動画を見れば「一目瞭然」だと、グレーゾーンは指摘する。

「車両の残骸が少なくとも30個、体に火のついた乗組員が走り回り、(装甲歩兵戦闘車の)BMPが自国の兵士を轢くなど、チェチェン戦争の1場面のようだ」

【動画】味方を轢く、逃げ惑う、ロシア戦車部隊の相変わらずの無能ぶり

投稿された動画からは、2人の兵士が戦闘車の下敷きになって引きずられたり、1人の兵士が走り出てきた直後に戦闘車が爆発する様子が見て取れる。

親ロシア派勢力が「建国」したドネツク人民共和国を率いるデニス・プシーリンに言わせると、ブフレダル制圧はロシアのウクライナ侵攻の行方を左右する可能性がある。

彼はロシア国営RIAノーボスチ通信に対して1月、モスクワは「ブフレダルからのよい知らせを待っている」と語った。この町を包囲して「解放」できれば、「たくさんの問題が解決する」と述べた。

「この集落を制圧すれば、わが軍の部隊にとってクラスノアルミスク(ポクロウシク)やクラホフスコエ方面への道が開ける」とプシーリンは述べた。

ウクライナ軍は12日、ロシア軍は過去24時間にで戦車13両、装甲車12両、兵員900名を失ったととウクライナ軍は12日に発表している。

ニューズウィーク日本版 トランプショック
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月22日号(4月15日発売)は「トランプショック」特集。関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 6
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 7
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 10
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中