電力需給ひっ迫対策、東京都が推進する「HTT」とは?
これらHTTの取り組みを推進していくために必要なのは、データの有効活用だと岩船氏は続ける。「東京電力管内のすべての顧客の電力メーターがスマートメーターになりましたが、ここから得られるデータは節電や蓄電の効果の評価などに使えます。こうしたデータを元にオンラインでエネルギー診断などをして、太陽光発電や蓄電池の設置前、設置後のデータをしっかりまとめて広報に活かすことが大切です。東京都はデジタルツイン(センサーなどから取得したデータをもとに、インフラ、経済活動、人の流れなどの要素をサイバー空間上に双子のように再現したもの)実現プロジェクトなどの先進的な取り組みも進めていますが、そこにエネルギーの情報も入れられたら良いと思います」
また従来の電力システムは需要量に供給量を合わせる形で調整が行われてきたが、これからはIoTなどの最新技術でエネルギーを制御して、供給量に需要量を合わせる「デマンドレスポンス(Demand Response/DR)」が重要になると言う。
「現状では多くの蓄電池は設置された建物のためだけにしか使われていませんが、外から制御できるようなシステムを導入することで、そのエリアの電力系統の柔軟性が上がり、調整力も確保しやすくなります。建物の所有者は、自分の蓄電池を使ってもらうことで対価をもらえるようにすれば、地域と建物所有者の双方にとってメリットがある。実際に、アメリカのカリフォルニア州では、電気自動車メーカーとして知られるテスラ社製の住宅用蓄電池を有している顧客が、同社による蓄電池制御を了承しエリア全体の電力不足に貢献できれば対価を受け取ることができる、という取り組みもあります」
将来的には地域単位でこうした取り組みを行うことが必要だと岩船氏は予測する。「電力の需給バランスを意識したエネルギーの管理を行うことが必要になってくると考えます」
取材・文/和田達彦
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