最新記事

ウイルス

乗客をまとめて検便します...米CDCが飛行機トイレ汚物の解析を検討中

2023年2月3日(金)19時30分
青葉やまと

しかし、鼻粘膜のサンプリングは個人個人がブースに立ち寄り対応する必要がある。乗客は空港で貴重な時間を割くことになるほか、CDCも人手を要する。

また、協力は任意となっており、ウイルスの拡散に敏感な人々ほど協力的であることが予見される。したがって、母集団が偏る選択バイアスが生じ、実際の感染状況よりも低い感染率となるおそれが指摘されている。

一方、トイレの汚水を分析する方式では、このように乗客が時間を割く必要がない。母集団にも偏りが生じにくい方式として期待されている。

海外からのウイルスに本領発揮

ウイルスの傾向を把握するプログラムとしてはすでに、下水をサンプリングして地域の感染状況を把握するしくみが試行されている。

しかし米アトランティック誌は、旅客機の検査はこの方式とは異なる利点があると強調する。海外からの流入傾向の把握に強いためだ。

昨年12月には中国政府が国内のゼロコロナ政策を大幅に緩和し、変異株の発生の懸念が高まったとして、世界的にも状況の推移が注視されている。こうしたなか同誌は、「海外から侵入する新種のウイルスに正確にねらいを定めて」実施できると評価している。

国内に流入するウイルスを把握できるこの検査方式は、革新的だとの呼び声も高い。ギンコー社のローラブロナー商業戦略担当副社長は、アトランティック誌に対し、空港の管理者でさえも興奮していると語っている。

英研究で有用性が確認された

イギリスではすでに同方式に関する研究が行われ、有用性が非常に高いことが確認されているようだ。

米テックメディアのアーズ・テクニカによると、英バンガー大学のカタ・ファーカス研究員らは研究論文を通じ、「国境を越えたヒトの病原体や、その他の病気の原因となる物質の世界的な移動率を監視するうえで有用な手法であり、将来の病気の発生を監視し、その拡大を抑制するためのより広範な国際的取り組みの一部として使用されるべきである」との見解を示している。

実施には航空各社の協力が必要となる。CDCの情報筋はCNNに対し匿名で、「物流と法的」な制限をクリアすべく、現在検討を進めている段階だと語った。

トイレだけに、プライバシー上の抵抗感を感じる旅客も一定数ありそうだが、路線ごとの感染傾向を一括して把握可能なしくみとして有望視されている。感染経路の解明にも有効となりそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中