乗客をまとめて検便します...米CDCが飛行機トイレ汚物の解析を検討中
しかし、鼻粘膜のサンプリングは個人個人がブースに立ち寄り対応する必要がある。乗客は空港で貴重な時間を割くことになるほか、CDCも人手を要する。
また、協力は任意となっており、ウイルスの拡散に敏感な人々ほど協力的であることが予見される。したがって、母集団が偏る選択バイアスが生じ、実際の感染状況よりも低い感染率となるおそれが指摘されている。
一方、トイレの汚水を分析する方式では、このように乗客が時間を割く必要がない。母集団にも偏りが生じにくい方式として期待されている。
海外からのウイルスに本領発揮
ウイルスの傾向を把握するプログラムとしてはすでに、下水をサンプリングして地域の感染状況を把握するしくみが試行されている。
しかし米アトランティック誌は、旅客機の検査はこの方式とは異なる利点があると強調する。海外からの流入傾向の把握に強いためだ。
昨年12月には中国政府が国内のゼロコロナ政策を大幅に緩和し、変異株の発生の懸念が高まったとして、世界的にも状況の推移が注視されている。こうしたなか同誌は、「海外から侵入する新種のウイルスに正確にねらいを定めて」実施できると評価している。
国内に流入するウイルスを把握できるこの検査方式は、革新的だとの呼び声も高い。ギンコー社のローラブロナー商業戦略担当副社長は、アトランティック誌に対し、空港の管理者でさえも興奮していると語っている。
英研究で有用性が確認された
イギリスではすでに同方式に関する研究が行われ、有用性が非常に高いことが確認されているようだ。
米テックメディアのアーズ・テクニカによると、英バンガー大学のカタ・ファーカス研究員らは研究論文を通じ、「国境を越えたヒトの病原体や、その他の病気の原因となる物質の世界的な移動率を監視するうえで有用な手法であり、将来の病気の発生を監視し、その拡大を抑制するためのより広範な国際的取り組みの一部として使用されるべきである」との見解を示している。
実施には航空各社の協力が必要となる。CDCの情報筋はCNNに対し匿名で、「物流と法的」な制限をクリアすべく、現在検討を進めている段階だと語った。
トイレだけに、プライバシー上の抵抗感を感じる旅客も一定数ありそうだが、路線ごとの感染傾向を一括して把握可能なしくみとして有望視されている。感染経路の解明にも有効となりそうだ。